空間情報プロジェクト

空間情報プロジェクトの中で取り組むここのテーマに対する解決策の特徴を以下に示します。

①リアルタイムGIS・GPS・ICタグを用いた高度空間情報社会の実現に向けた提案
 ならびに視覚障害者のための触地図利用促進の提案

地理空間情報高度活用社会(いわゆる弱者にやさしい環境)を実現させるためにシームレス測位は必要不可欠である。室内外でシームレスに位置情報を取得するためは、GPSとICタグを用いることが1つの解決策であると考えている。GPSは上空視界が確保できる場所で測位し、上空視界が確保できない場所ではICタグを用いて位置情報を補完する。地理空間情報活用推進基本法(2007年施行)による基盤地図情報の提供は今後のベースマップの主流になることは間違いない。空間情報技術とRFID技術(ICタグ)、電子国土ポータルなどを用いれば、一般の人々に加えて高齢者や視覚障がい者の歩行および移動を支援でき、すべての人々が安心に暮らせるユニバーサルな環境が実現する。

 

②気球を利用した環境観測システムの開発

センサを搭載するプラットホームとして気球を選定した。ラジコンヘリなどの飛行体も検討したが,オペレートするのに熟練した技術を要することや墜落する危険があることから安全面を優先した。気球はヘリウムを充填して掲揚するため爆発の危険もなく安全なプラットホームとして利用できる。気球を係留する錘として,ポリタンクに水を注入する方法を取った。ポリタンクの水を調整することで係留場所の移動が容易となった。
気球の大きさにより掲載可能重量が決まるが,架台は軽量で強固でありなおかつ加工が容易なプラスチックボックスを採用した。
観測センサは4台のデジタルカメラを選定した。カメラは,無線LANで地上に画像を転送することができる機能をもつデジタルカメラ2台と画像の解像度が高く高分解能で撮影することのできるカメラ2台である。
地表の3次元情報を取得するための方法として,2方向からデジタルカメラによるステレオ視撮影方法を採用した。ステレオ撮影により写真測量の原理から高精度に3次元計測をすることが可能となる。ステレオ撮影を実現するために上空にある2台のカメラのシャッタを同時に押す必要があるが,本システムでは,無線LANと赤外線リモコンを組み合わせたスイッチを新規に開発することによりそれを実現した。さらに無線機能を有するカメラを利用して,撮影している画像を地上のPCに転送し,リアルタイムで撮影範囲を確認できる機能を実現した。

 

③建築分野における3次元データ活用技術の活用
 1.木造伝統建築の改修工事における3次元レーザー計測データの活用
 2.歴史的景観保全のための環境アーカイヴ支援技術の構築
 3.建築教育におけるBIM(Building Information Modeling)アプローチの導入

「1」のテーマについては、実際の改修工事プロジェクトと連携して3次元レーザー計測を行い、2次元および3次元の破損図を作成する手法の開発を行った。これにより、建物の歪みなどをより明確に可視化し、力学的解析の質向上を図ることができ、木造伝統建築再生の質向上につながる。
「2」のテーマについては、金沢の歴史保全地区についてGIS(地理情報システム)と連動した全周動画映像を撮影し、街並み保全に有効な環境アーカイブプラットホームの形を示した。また、レーザー計測も応用し、歴史地区の連続立面図の作成を行った。これらから、街並み保全に関わる共有データの整備や合意形成を効果的に進めていくための手法が整理された。
「3」のテーマについては、環境配慮型の住宅についてその部材構成を詳細に再現した3次元CADによる構法モデルを試作した。またこれを実際の授業で活用した結果、学生に構法(設計と生産の関わり)をより深く理解してもらう上で有効であることが分かった。このような活動は生産活動を意識した設計の在り方、すなわち資源の有効活用や省エネルギー性の高い建築設計・生産技術に興味を持つ機会になると考えられる。