実施概要 内容+出演者 結果報告

large image

テーマ解説
[情動] ―欲望・操作・自由―とは

このごろ世の中で起こっていることには、どうも論理では割り切れない印象があります。9.11以降の対テロリスト「終わりなき戦争」、予測できないファッションやエクササイズ、商品アイテムの大流行、子殺しなど了解不能な犯罪の横行、自閉的なITおたく文化、地震、津波、台風、原発事故などの複合災害、そして、官公庁や会社の不祥事の連鎖、政界の腐敗と選挙における与党の記録的な敗北、などなど。

たとえば「セカンドライフ」 は毎月、数十万人のペースでユーザー登録が増え続け、創始から2年で1,000万人を超えようという勢いです。その仮想世界ではユーザーの仮託したアバター(新人格)が自由に行動し、物理的なリアルをいとも簡単に踏み越えて、ときに現実世界より濃密な社会関係を紡ぎ出します。「セカンドライフ」内で流通する仮想通貨と現実通貨の交換額が、2009年までに8、000億円を優に超えるだろうと予測されるように、その市場経済効果はこの上もなくリアルなのです(通貨のもともと仮想的な性質のアイロニーとして!)。

こうした驚くべき現象の数々を通して、私たちの生活世界のリアリティと身体のアイデンティティが緩やかに崩壊し、定義し直される予感もあります。そのような予感を見据えて未来身体を見通したいと思うとき、論理がもはや頼りにならないとすれば、他に何があるのでしょう。

ここで「情動」というキーワードに思い当たります。認知神経科学では、心の一時的な状態を感情と呼ぶのに対して、その器ともいうべき身体/脳の生理的活動をも含めて情動と呼びます。情動は心の身体性やその古い進化的起源につながり、無意識の領域を支配すると同時に、他方ではコマーシャルやマーケティング手法などを介して、政治権力、大衆操作、情報管理にまで連なる広く現代的な射程を持っています。

今年で11年目を迎える[ルネッサンス ジェネレーション]では、近未来の人間及び人間社会の根幹をなす[情動]をテーマに採り上げます。精神分析、神経科学からのゲストと共に、ニューロマーケティングや哲学思想の専門家インタビューやパーフォーマンス映像などを交えながら、情動の回路とネットワークが近未来に意味するところを縦横に論じたいと思います。

 
監修者:下條信輔・タナカノリユキ
     
back to RENAISSANCE GENERATION TOP