実施概要 内容+出演者 結果報告

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近未来の人間と人間社会の根幹に挑む1dayセッション。


情動とは、脳と身体を起動し感情経験を引き出すプロセス。
それは主に潜在的/無意識的であり、何よりも動物的な起源を持つものです。
情動こそは間違いなく、人間と人間社会の、近未来の根幹となることでしょう。

 ・日時:2007年11月17日(土)13:30-18:00(13:00開場)
 ・会場:草月ホール 東京都港区赤坂7-2-21 草月会館B1F
 ・入場無料
 ・本プログラムは終了しました。
主催:金沢工業大学
協賛:
日本アイ・ビー・エム株式会社 / 富士通株式会社 / 株式会社東芝 /
株式会社映像センター/ サッポロビール株式会社 /
株式会社竹尾 / 凸版印刷株式会社 / 日本SGI株式会社
後援:財団法人日本科学技術振興財団
総合プロデュース:二飯田憲蔵(金沢工業大学)/ 赤羽良剛(BRAIN FORUM INC.)
 
■監修:
 タナカノリユキ (アーティスト・クリエイティブディレクター・映像ディレクター)
 下條信輔 (カリフォルニア工科大学教授、ERATO下條潜在脳機能プロジェクト/ 知覚心理学・認知脳科学・認知発達学)
 
■ゲスト出演者:
 廣中直行 (ERATO下條潜在脳機能プロジェクトグループリーダー/神経生化学、精神薬理学、医学博士)
 十川幸司 (十川精神分析オフィス、メンタルクリニックおぎくぼ/精神分析家、精神科医)
 金剛地武志 (ミュージシャン・俳優)
 
■ビデオインタビュー出演者:

 クリスチャン・シャイア

(decode社 創設者、CEO/ 人工知能、ロボティクス、心理学、マーケティング)
 酒井隆史 (大阪府立大学准教授/ 社会思想、都市文化論)
   


<プログラム解説>

*内容は多少変更する場合があります。ご了承ください。



イントロ[情動―きわめて現代的な]
出演:タナカノリユキ×下條信輔

非論理的なもの、非記号的なもの、感性的なもの、身体的なもの、生理的なもの、いわく言いがたいもの、ふと感じるもの、衝き動かすもの。現代社会でめまぐるしく起こる、想像を超えた事件や災害から流行までの諸現象を見通そうとするとき、連想するのはこのような漠然とした特徴です。セカンドライフ、バーチャル経済の資料映像なども交えながら、アクチュアルな問題意識を素描します。



対論[情動の現代]
出演:タナカノリユキ×下條信輔


今回のテーマにはいくつかの伏線があります。まずは、情動こそが脳と身体を起動し感情経験を引き出すプロセスだということ。それは主に潜在的/無意識的であり、なによりも動物的な起源を持つものです。それゆえに間違いなく、現代社会のアートもコマーシャリズムも政治権力も、情動系にターゲットを絞りつつあります。選挙の世論操作や、潜在マーケティングはその良い例でしょう。段取りなしで本番トークします。



ビデオインタビュー[潜在マーケティング最新事情]
出演:クリスチャン・シャイア インタビュー:下條信輔 


消費者行動を科学できれば、実際の商売に役立てることができるのではないか。そういう研究は昔からありますが、実際にはなかなか役に立ちませんでした。現実の消費者の行動がケースバイケースで複雑であるだけではなく、被験者の言葉による報告=意識的指標だけに頼っていたことが大きな制約になっていたのです。消費者の無意識のレベルで働く情動のふるまいを、fMRIなど脳神経計測も援用しつつ解明しょうとする潜在マーケティングが、最近実用化されつつあります。このテーマの最先端の研究者として、ベストセラー本の著者として、またベンチャー起業家として、いずれも大きな成功を収めているC. シャイア博士に、 潜在マーケティングの驚くべき成果と将来について訊きます。



基本レクチャー [情動と無意識]
出演:十川幸司


精神分析家は日頃、臨床の中で、常に情動の問題に直面しながらも、その理論化が困難なことから、情動は精神分析理論においては、周辺に位置する問題系となってきました。この傾向は、言語を過度に重視する20世紀後半の精神分析の潮流によって、いっそう拍車がかかることになります。しかしこの10年くらいの脳科学研究により、精神分析の内部においても新たな情動へのアプローチが可能になりつつあります。情動は、心的現実の核となり、自己内部でイメージ、記憶、身体やさらには社会性へと結びついた複合連動系のシステムを形成しています。臨床的には、(家族や社会による)情動的な働きかけは、患者の多様な病理を形成するとともに、(分析家との)治療的コミュニケーションにおいては、患者の情動の作動こそが患者の経験の回路に変化をもたらし、別様に考え、感じることを可能にします。このように情動は科学的、哲学的、臨床的な問題だけではなく、生の変容といった倫理の問いとも連接しています。



[タナカノリユキのアートワークス・ショウイング]
朗読:金剛地武志 
ミュージシャン・俳優
演出+映像:タナカノリユキ、テキスト:下條信輔




基本レクチャー [情動:わが内なる動物]
出演:廣中直行


情動という言葉の示すところは感情一般よりもやや狭く、誘発する刺激がはっきりしており、身体反応を伴う比較的強い感情を言います。情動には危険を避け、食物や繁殖相手への接近を促す役割があり、情動こそ生存と進化の原動力であると言えます。情動の神経機構には不明な点が多いが、我々の怒り、恐れ、悦びなどの源泉は系統発生的に古い脳構造であり、その駆動機構の基本は生得的にプログラムされていると考えられます。他人にじっと見つめられた時や、黒板をひっかく音を聞いたときに生じる不快感は、このようなプログラムが働いた結果でしょう。ヒトの脳は高度なシンボル操作能力やコミュニケーション能力を備えていますが、こうした高次の脳機能と情動の有機的な対話がなければ、我々はヒトという種の存続を危うくする行動に突き進むかも知れません。そこでまずは情動の神経機構を知ろう。それは我々自身の姿を科学の知で照らす鏡を手に入れることになるはずです。

ビデオインタビュー[情動の権力]
出演:酒井隆史 インタビュー:下條信輔 


身体は、外部のものをアフェクトし、同時に外部のものからアフェクトされています。私たちはなにかにアフェクトするときに、つねにアフェクトされることにみずから開いている。私たちはその二重の過程の中で、微少であるとしても、常に推移している、あるいは移行の途上にあります。ここでのテーマは、このような情動(affect)の次元と、権力がどうかかわっているかです。いま権力はイデオロギーや物語といった表象の次元をかつてほど重視せず、この情動の次元に直接に働きかける傾向にあるのではないでしょうか。そのとき、私たちの身体はどのようなものとなるのでしょうか。

総括討論[欲望、操作、自由]
出演:廣中直行×十川幸司×タナカノリユキ×下條信輔(司会)


無意識と身体と感情。この3つの領域のつながるあたりで、今何かが起きている。「情動」に詳しい人もそうでない人も、現代社会に生きる人なら誰でもが、うすうすそのように感じているのではないでしょうか。私たちの欲望は操作されているのか。私たちの自由はどこへいくのか。これはひとりマーケティングやビジネスモデルの問題ではなく、人気や流行の問題でもなく、医療や技術の問題でもなく、ましてや政治や思想の問題でもなく、それらの底に流れ、それらをダイナミックにつなぐある過程の問題です。知りたいポイントは3つ。情動とは何であり、今なぜ情動が問題となり、それが近未来の心と体をどこへ運んで行くのか。ライブ出演の専門家に監修者を交えて、ガチンコ討論します。

 
 
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