KITビジネスアーキテクトプロジェクト 文部科学省 平成21年度採択「大学教育・学生支援推進事業」大学教育推進プログラム【テーマA】
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日下教授へのインタビュー

フォーラムの後日、情報学部のGPプロジェクトを総括してきた日下教授が、プロジェクトを振り返り、今後の展開を語った。


インタビューに答える日下教授
−まず、開始当初のお話を。

学科・学年の枠組みを超えたプロジェクト運営への挑戦

情報学部には、情報工学科のほか、メディア情報学科、心理情報学科、情報経営学科の4つの学科がありますが、学科・学年の枠にとらわれることなく一つのプロジェクトに取り組むというのは、大学にとってもこれまでにない画期的なことでした。そのため、スタート前には、各学科の教員が何度も集まり、互いの資質を向上させるFD(ファカルティ・ディベロップメント)を行い、プロジェクトを推進する体制を整えました。このようにGP事業を契機に、学科をまたがって教員が交流し、サポートできたことも今回の成果の一つであったと言えるでしょう。

※学部・学科については2012年度より再編。

−プロジェクトの目的はどこにありましたか。またそれはどのような形で達成できたとお考えですか。

プロジェクトがもたらしたもの

そもそも情報教育においてコミュニケーションは大切な要素です。しかし、ゲームやネットの世界には親しんでいるが、現実世界で他者と円滑なコミュニケーションをとることを苦手とする学生が多いのも事実です。
ところが、プロジェクトでは、学生同士はもちろん、外に出て、企業や地域社会とコミュニケーションをとることが必要不可欠です。そこにはさまざまな壁が立ちふさがり、思うような進捗状況にならないのは当然ですが、失敗の経験やそれを乗り越えてやり遂げた充実感こそが、彼らにとっての財産になったはずです。それと、情報学の分野は日進月歩の世界ですから、企業の中で最新の情報に接し、スピード感を肌で感じることができたのも貴重な体験となったことでしょう。
日ごろ自分が大学で勉強していることが社会でどのように役立っているのか、自分の力は社会で通用するのか … プロジェクトを通じてそのようなことを理解することが、新たな学習意欲につながると考えています。
学生同士は、最初は互いにぎこちないように見えましたが、どのチームでもプロジェクトが進むにつれ、スムーズにコミュニケーションをとれるようになり、予想以上の効果があったと思います。先日のフォーラム会場でも、熱心に仲間の発表を聞く生徒の姿が見られ、それにはこちらも感激しました。コミュニケーション能力の向上は数字では表せませんが、彼らを見ればはっきりとわかります。

ソリューション提案コンテストを実施

プロジェクトのキーポイントの一つに、課外授業として実施したソリューション提案コンテストがあります。このコンテストで企業の課題を見つけ、その解決のためにIT技術を駆使するというプロセスを経験できたことはすごくよかったと思います。
授業でも、問題を発見し解決していくプロセスは学んではいますが、実際に現場ですぐにその力を発揮できるかというとそうではない。時には厳しく、企業から自分たちの提案を批判されたり批評されたりという経験は、学生にとって良い刺激となったようです。
コンテストでは、推進委員会を設立し、教員が学科にこだわることなく学生をサポートしました。教員が専門的な視点から他学科の学生にアドバイスするスタイルは今までになかったので、有意義な取り組みとして今後も継続していきたいと考えています。
また、4年生でしたら自分が取り組んだプロジェクトの一部を、正課の科目であるプロジェクトデザインV(※他大学でいう卒業研究に相当する科目)に組み込むことも可能です。与えられたテーマの研究をするのではなく、自分が興味や関心を持ったテーマに沿って、しかも社会や企業とつながりを持ちながらできることから、プロジェクトデザインVに取り組む学生は増えています。

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−産学連携において欠かせない企業との関係ですが、この点についてはいかがでしょうか。

地域、企業への貢献が条件

産学連携においては「企業の支援」をいただかなくてはなりませんが、そこには「継続していくことの難しさ」という課題も付属してきます。
企業から支援いただき、事業を継続していくためには、最終的にプロジェクトの中身がきちんと企業や社会に対して貢献できるものであることが条件だと思います。
企業が学生を支援した結果が成果として地域に還元され、将来的には優れた人材の確保や研究開発面での具体的な成果、さらにはソリューションの創出や売上に貢献するなど、「目でみてわかる」形にできることが理想ですね。そういった意味では、先日発表のあった地域クラウドイノベーションはうまくいった例だと言えるのではないでしょうか。企業の情報収集や異分野の交流に対するニーズと、学生の学びの場がうまく連動したと思っています。
本学には産学連携に関する専門の部署があり、プロジェクトについてもさまざまな調整を行っています。教員が、先ほど申しましたFDでスキルアップを図ったのと同様、産学連携機構事務局でもSD(スタッフデベロップメント=職員研修)を行い、企業ニーズの把握やそのニーズに応える産学連携プロジェクトの提案などに関して応対できるように心がけています。

−今後の課題については?

課題をクリアし、未来へつなぐ

プロジェクトの課題として、テーマによって参加人数が変動してしまうといったこともあげられます。今後は大学側がその魅力や価値をいかに効果的に伝えられるかを工夫していく必要がありますね。
採択以来、産学連携の在り方を模索しながら事業を進めてきましたが、学生が上手に企業から課題を引き出せる力があること、自分たちで解決する力があることがわかりました。どのチームでもわりと早い段階で自然とリーダーができ、「リーダーがやるなら、自分も」といった雰囲気も感じられました。リーダーの中には、普段の授業では見ることがないリーダーシップを発揮する学生もいて、そこはちょっとうれしい誤算でした(笑)。

プロジェクトに参加したメンバーは、「協力して期限内に完成できた」という自信が就職活動にも生かされているように思えます。このような流れが継続すると、学校全体が社会と連動した活気にあふれ、学生一人ひとりが自分たちの将来を見つめながら充実した大学生活を送ることがきると考えています。

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