見どころ

「世界とは何か」。古代の哲学者=科学者たちが抱いた根源的な問いは、無数に枝分かれし、絡み合いながら、大樹の枝、あるいは根のように広がっていきました。その結び目、といえるのが「書物」です。たとえばコペルニクスの地動説、ケプラーの楕円軌道説、そしてニュートンの力学は、いずれも書物のかたちで示されたものでした。時代の限界に制約され、多くの誤りと未解決の問題を抱えながらも、新しく創造的な問いを生む契機を宿した書物たちの連なりが、「世界」の素顔を少しずつ明らかにしてきたのです。今展では、それら自然科学・工学関連の稀覯書約140冊を、一堂に展示します。いずれも15世紀に普及した活版印刷術によって、多くの人に読まれるようになった印刷本で、金沢工業大学図書館の稀覯書コレクション〈工学の曙文庫〉からの出品です。

出展書物(一部)

エウクレイデス『原論』

エアハルト・ラートドルト、ヴェネツィア、1482年、ラテン語、初版

Euclides (fl. 300 B.C.)
Preclarissimus liber elementorum Euclidis perspicacissimi: in artem geometrie incipit qua[m] foelicissime,
Erhard Ratdolt, Venetiis, 1482, Latin, First edition.

古代ギリシアの数学者エウクレイデス(ユークリッド)が、図形(幾何学)だけでなく、紀元前3世紀頃の数学、幾何学や数論についての命題を広くとり集めて13巻にまとめたもの。証明つきで命題を積み重ね、確かな理論の体系をつくる『原論』のスタイルは、以後も長いあいだ、数学に限らず、物事を確実に論じる際の手本となってきました。本書は、長い間写本で詠み継がれてきた『原論』が、はじめて活字で印刷された書物で、理解を助ける美しい図版も大きな見所のひとつです。

エウクレイデス『原論』

ニコラウス・コペルニクス『天球回転論』

ヨハネス・ペトレイウス、ニュールンベルク、1543 年、ラテン語、初版

Nicolaus Copernicus (1473-1543),
Johannes Petreius, De revolutionibus orbium coelestium, Norimbergae, 1543, Latin, First edition.

それまで地球中心説(天動説)が常識とされてきたヨーロッパで、コペルニクスは先人たちの考えたことや観測データを吟味した結果、太陽の周りを地球や他の惑星の天球が回っているのだと考えるに至りました。これが太陽中心説(地動説)です。本書ではその考えを、エウクレイデス流の幾何学の論証スタイルによって詳しく論じています。没後には教会によって禁書目録に掲載されましたが、ガリレオ・ガリレイやヨハネス・ケプラー、アイザック・ニュートンなど、天文研究にとりくむ人びとに支持され、宇宙論を進める原動力となったのです。

ニコラウス・コペルニクス『天球回転論』

ガリレオ・ガリレイ『星界の報告』

トンマーゾ・バリオーニ、ヴェネツィア、1610年、ラテン語、初版

Galileo Galilei (1564-1642),
Sidereus nuncius Magna, Longeque admirabilia spectacula pandens., Tommaso Baglioni, Venice, 1610, Latin, First edition.

17世紀に発明された望遠鏡を、自らの手でつくり、天空へ向けたのがガリレイで、見えたものをつぶさに報告したのが『星界の報告』でした。当時の人が宇宙について持っていた「常識」を覆す月の表面の様子や、オリオン座の周りにある星、木星の衛星の動きなどを、言葉だけでなくスケッチや図を用い、どのように見えるかを記しています。

ガリレオ・ガリレイ『星界の報告』

アイザック・ニュートン『自然哲学の数学的原理(プリンキピア)』

ジョセフ・ストリーター、ロンドン、1687年、ラテン語、初版

Isaac Newton (1642-1727),
Philosophiae naturalis principia mathematica, Joseph Streater, London, 1687, Latin, First edition.
Jussu Societatis Regiae ac Typis Fosephi Streatre

太陽や月、岩石、リンゴに至る「物体」の運動をテーマとするのが本書。そこでニュートンが注目したのが、物体同士のあいだに働く引き合う力「引力」です。天体が楕円軌道を動くところまで突き止めたケプラーも、なぜそんなふうに動くのかについては、明確な答えを出せませんでした。ニュートンは本書の中で、ケプラーの法則を手がかりに、引力の働きを用いてさまざまな運動を説明しています。

アイザック・ニュートン『自然哲学の数学的原理(プリンキピア)』

ロバート・フック『ミクログラフィア』

ロンドン、1665年、ジョン・マーティン&ジェイムズ・アレストリー、英語、初版

Robert Hooke (1635-1702),
Micrographia: or some physiological descriptions of minute bodies made by magnifying glasses with observations and inquiries thereupon., John Martyn and James Allestry, London, 1665, English, Fist edition.

望遠鏡が、肉眼では見えないはるか遠くの星々を見えるようにする装置だとすれば、顕微鏡もまた、肉眼では見えないとても小さなものを見えるようにする装置と言えるでしょう。その顕微鏡を自作したロバート・フックが、レンズを通して観察したさまざまな小さなものについて報告しているのが本書です。レンズごしに見たものをフック自身がスケッチした絵は、本書の刊行から350年以上経った現在も、見る者にたくさんの驚きをもたらすに違いありません。

ロバート・フック『ミクログラフィア』

展示構成

「知の壁」
知の旅は、圧倒的な「書物の壁」との出会いからはじまります。ここでは、建築や芸術に関わる稀覯書をご覧いただけます。

「知の森」
世界を一変させた発見や科学技術に関する初版本およそ100冊を展示しています。ここでは、書物を通じて科学の結び付きを体感するとともに、原書の魅力をご覧いただけます。

「科学知の連鎖の塔」
過去から現代、さらには未来に向けての科学知の連鎖の関係を、インスタレーションと表しご紹介しています。

展示プランは金沢工業大学建築学部 宮下研究室が設計しました。

宮下研究室 大学院生・学部生
八木 瑞基、窪田 榛奈、漆原 美優、金川 乃々、矢野 碧、村西 理子、中山 咲里、小島 智寿、城野 蒼太、浦野 良太、加納 和篤、白井 涼花、藤澤 理央、今泉 光琳、平井 聡吾、太刀川 鈴音、西岡 愛奈、藤森 雅也、柗田 真之介、横尾 優人、越智 恒成

「知の壁」東京展  展示風景

「知の壁」東京展 展示風景

「知の森」大阪展  展示風景

「知の森」大阪展 展示風景

「科学知の連鎖の塔」東京展  展示風景

「科学知の連鎖の塔」東京展 展示風景

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