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2022金沢21世紀美術館市民ギャラリーA B
2022年10月21日[金]–11月5日[土]
特別展示
出展書籍
実施概要
タイトル | [世界を変えた書物] 展 |
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会期 | 2022年10月21日[金]–11月5日[土] ※但しギャラリーB「特別展示」は10月30日までの開催 会期中無休 午前10時〜午後6時(入場は閉場の30分前まで) 入場無料 |
会場 | 金沢21世紀美術館 石川県金沢市広坂1-2-1 |
主催 | K.I.T.金沢工業大学 |
監修 | 山本貴光(金沢工業大学 客員教授) 橋本麻里(金沢工業大学 客員教授) 竺 覚暁(元金沢工業大学教授 ライブラリーセンター顧問 –2020) |
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会場構成・ 展示デザイン |
金沢工業大学建築学部 宮下研究室 金沢工業大学准教授 宮下智裕・大学院生・学部生 |
総合プロデュース | 二飯田憲蔵(金沢工業大学 企画部) |
制作 | ハクション |
グラフィックデザイン | 白井敬尚形成事務所 |
動員数 | 37,122人<16日間> 1日平均2,320人 |
展示内容
[世界を変えた書物]展市民ギャラリーA
エントランス
金沢工業大学が「工学」の観点から収集した15世紀以降の稀覯書のコレクションを公開する[世界を変えた書物]展。2012年金沢21世紀美術館でスタートし、その後名古屋、大阪、東京、福岡と巡回し、10年ぶりに再び金沢での開催となりました。今回は特別展示として「手稿の中の宇宙レオナルド・ダ・ヴィンチを旅する」を併せて展開しました。
[世界を変えた書物]展のエントランスでは、「稀覯書の定義」「書物の変化の過程」などのご紹介と併せて、金沢工業大学が20数年間毎年制作してきた稀覯本コレクションをモチーフとした「ポスターカレンダー」も紹介しました。
知の壁 THE WALL OF WISDOM
[世界を変えた書物]展の会場構成・展示デザインは、金沢工業大学建築学部宮下研究室の大学院生、学部生たちが宮下智裕教授ととも担当しています。初回の金沢展から見どころのひとつである『知の壁』は、膨大な量の本棚とその空間に圧倒されます。本棚に設置されたケースに並べられた「建築書」の数々は、そのイラスト、装丁、印刷の美しさをじっくりお楽しみいただけます。A. デューラーの『人体比例論四書』、F・コロンナの『ポリフィルス狂恋夢』どれも貴重なコレクションです。
知の森 THE FOREST OF WISDOM
先人の知的探究の成果から、次の新たなひらめきが生じ、人類はこの「知の連鎖」によって科学的発見、技術的発明を成し遂げ、文明を前進させてきました。これまで13のカテゴリーに分けこうした知の連鎖を軸として「稀覯書」コレクションをご紹介してきましたが、今回は新たに14つ目のカテゴリーとしてハイゼンベルグなど「量子論」の4冊を加え、全190冊の「稀覯書」をご紹介しました。中央には、[世界を変えた書物]展の主題でもある『科学知連鎖の塔』も今回14カテゴリーを増設しご紹介しました。
『特別出典』『複製本(レプリカブック)』
金沢工業大学が所有する初版本は、工学領域以外にも生物学、占星術など関連する諸分野の書物も含む、貴重でユニークなコレクションです。ここでは、工学系の枠を超え誰もが知っている著名な科学者、C.ダーウィン「種の起源」からアポロ11号「月面への第1歩」まで、その幅広いコレクションの一部をご紹介しました。また先の14カテゴリーでご紹介した工学系の稀覯本の一部の「レプリカ本」を展示し、「触れるレプリカ」として手に取って自由に閲覧いただきました。
また、金沢工大の蔵書以外も含め連鎖の系譜を時系列で「年表」に表しました。
映像による『ミニレクチャー』『書物を廻る旅』
本展監修者山本貴光客員教授、橋本麻里客員教授による[世界を変えた書物]展の見どころと共に、学術史の巨大な流れを俯瞰する、ミニレクチャーを上映しました。
また「書物を廻る旅」と題した活版印刷発明後の書物伝播の広がりを世界地図と時系列で分類した映像で紹介しました。
『世界を変えた書物展』SHOPと図録
東京展よりはじまった小学館による展覧会限定グッズ販売に加え、今回は待望の[世界を変えた書物]展の公式ガイドブック(著者山本貴光、編集・構成橋本麻里)を展覧会に合わせて小学館より出版・販売いただきました。
この度の金沢展でのグッズ販売も小学館のご協力で実現しました。
特別展示「手稿のなかの宇宙レオナルド・ダ・ヴィンチを旅する」
1Fの展示に加え、地下のギャラリーBではレオナルドの手稿をテーマに特別展示を開催しました。モナ・リザをはじめあまりにも有名なアーティスト、レオナルド・ダ・ヴィンチは、その残された絵画作品は極めて少ないことでも有名ですが、レオナルドは膨大な量の「手稿」を残しました。レオナルドが約40年にわたって、絵や彫刻の下絵はもちろん、語学学習の単語帳から買物メモにいたるまで、あらゆることを書き綴った手稿は、約4000ページが現存するといわれています。
今回は金沢工大がそのレプリカを所蔵する《アトランティコ手稿》、《パリ手稿》を中心に「手稿の中の宇宙」と題して、レオナルドの手稿を細分化する中から彼の頭のなかを旅してみようという試みに挑みました。
「レオナルド・ダ・ヴィンチの書斎と蔵書」
冒頭、エントランスにはレオナルドの書斎を再現。ここはレオナルドの絵画の制作アトリエであったと同時に、彼の頭に浮かぶ様々なアートとテクネーを空想し、想像する現場でもありました。当時レオナルドが愛読したとされる蔵書の中から、金沢工大が所蔵する同タイトルの稀覯本から、3冊も併せてご紹介しました。『建築論』『軍事論』『博物誌』と領域が多岐にわたることからもレオナルドの興味が多方面にわたっていることがうかがえます。
「軌跡を辿る」
レオナルドの「手稿の中の宇宙」への旅。
旅の冒頭、「変遷の道」レオナルドの生涯について確認できる事実と「思考の途」手稿の中で構想されたたこと、2つの方向からご紹介しました。その両者の軌跡を辿りながら、絵画とは異なる、もうひとつの「レオナルドの宇宙」をご紹介しました。
「変遷の道」:レオナルドの生涯について確認できる事実を14メートルにわたる年表にまとめ、絵画だけでなく、工学、解剖学、建築、音楽など、多岐にわたる分野を自在に往還しながら創造性を発揮していた様子をご覧いただきました。
「思考の途」:《アトランティコ手稿》の一部を立体化し、時系列でご紹介。手稿に記された言葉とイメージは、レオナルドによる「探究」と「創造」の始まりを明かす痕跡です。膨大な思考の断片を旅するようにご覧いただきました。
「 」を問う
レオナルドはなぜ、これほど多様な領域に関心を持ち、成果を残すことができたのか。それは世界の万物に対して常に、何、なぜ、どのように、という問いを抱かずにはいられなかったからではないでしょうか。自らの先入観や常識をいったん棚上げにし、眼前のすべてを疑い、問いを持つことは、あなた自身の脳を、レオナルドのそれと同期させるに等しいのではないかと考えました。
鏡に囲まれた空間にはいると「天使の羽ってどんな羽?」という問いを突然投げかけられます。この問いは最後のスペースにたどり着いたときどうなることでしょう。
「 」を探る
会場に並んだ28本の円柱は、手稿のスケッチに示されたレオナルドの思考を分類し、提示したものです。互いに関連性が見出せるスケッチは、その共通項を明示しながらラインで結び、思考が連なっていく様子をひと目で見て取れるようにしました。自在に触発し連鎖する思考がまずあり、その思考を整理した末に書物へと結実する。レオナルドの思考の網の目をたどってみると、そこには無数の創造の種が蔵されていることに気づかされるでしょう。
周囲には《パリ手稿》《アトランティコ手稿》のレプリカ各24巻の展示、壁面には、1987年に金沢工業大学で開催された「科学者レオナルド・ダ・ヴィンチ展」に出展された模型をもとに、《パリ手稿》《アトランティコ手稿》の中から関連するスケッチを選定、拡大して展示しました。
体験ギャラリー
「学生が覗くレオナルドの頭の中」:レオナルドの頭の中は、問いと仮説、さらに発展した思考、連想が渦巻き、衝突や融合を繰り返し、拡大を続ける、まさに宇宙のような空間です。手稿に記されたイメージやそのタイトルを抽出し、それらがどのような領域の問いや知識と関係するのか、関連しあっているのか学生自身が考え表現しました。
一方会場奥の壁面には「あなたが描く天使の羽」と題し、冒頭の問題提起を受けて来場者がどのようなイメージを思い描いたのかをポストイットに描いてもらいました。
前室で展示した《アトランティコ手稿》12巻は、ここでは「触れるレプリカ本」として自由に閲覧。さらに中央には、復元彫刻3点を展示。これらは、1996年~2000年にかけて当時の金沢工業大学建築学科アズビー・ブラウン助教授のもとレオナルド・ダ・ヴィンチ模型制作プロジェクトが夢考房にて制作したものです。