[ リアリティ ザッピング:同時多発TV ]とは
現代に生きる私たちは、ますます未確定な世界と、いよいよ不確かになる「心」の輪郭との、挟み撃ちにあっている観があります。この不確かさと不安の根源は、一体どこにあるのでしょうか。
そもそも、私たちの感覚自体が曖昧です。確かに「自分で見たものしか信じない」という人もいます。しかしそういう人は、イリュージョンや鏡の中に見た虚像さえ、実在すると言うのでしょうか。
テレビの中の戦争、中継された月面世界。これらは編集され、演出されたヴァーチャルリアリティだと言われます。しかしもしヴァーチャルだというなら、では実際に目撃した殺人事件なら本当にリアル、と言えるのでしょうか。
未来は現在となって刻々と実現し、さらに過去となって流れ去ります。未来と過去は、本当に在るのでしょうか。確かなのは現在だけなのでしょうか。というより、肝心の「現在」は大丈夫なのでしょうか。現在は、どこにあるのでしょうか。
記憶は、存在するのかどうか。するのなら一体どこに。また、思い出せなかった過去は、消え去ったのかどうか。一方、思い出され形づくられた物語は、過去の「事実」を捏造してゆくのかも知れません。では映像として記録された過去ならば?
人は、自分が見たいものを見、聞きたいものを聞くといいます。見ること、聞くことの経験そのものが、さらなる欲望と快楽の神経回路を開きます。となると、リアリティとは心が紡ぎ出すイリュージョンに過ぎないのでしょうか?
やはり問題は「心」に至ってしまうようです。果たして心は実在するのでしょうか、あるとすれば、どこに? そして心のリアリティとは?
今回のルネッサンス ジェネレーション「リアリティ ザッピング:同時多発TV」は、そんなリアルとヴァーチャルの現在形を探ります。では、ご招待しましょう、ますます不確かの増すヴァーチャルな時代にあって、限りなく増殖するアリスのワンダーランドへ。
監修者:下條信輔・タナカノリユキ
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