第18回講座
アルベルト・アインシュタインは
何を考え、何を語ったか
〜特殊相対性理論より学ぶ〜
- 講師:金沢工業大学 数理基礎教育課程
教授 谷口 進一プロフィール金沢大学工学部工業化学科卒。同大学大学院工学研究科修士課程(工業化学)修了。村田製作所(株)化学開発部を経て、金沢大学大学院自然科学研究科博士課程(物質科学・応用物理)修了。同大学教養教育機構、および工学部非常勤講師(物理学、物理数学、力学等担当)、予備校講師(数学)。2006年金沢工業大学講師。准教授を経て2014年教授。専門は光物性物理学、有機光化学、工学基礎教育。

金沢工業大学ライブラリーセンター所蔵
運動物体の電気力学について
1905年にドイツのAnnalen der Physik誌に掲載されたアインシュタインの論文
「運動している物体の電気力学について」(特殊相対性理論に関する最初の論文)について解説します。
当時、弱冠26歳のアインシュタインは、このとき発表した特殊相対性理論により、 ニュートンがつくり上げた壮麗で堅牢な「古典力学」という巨大な構築物の土台に、 彼独自の思考実験と健全な批判的精神をもって挑み、根本的な修正を迫ったのでした。
特殊相対性理論は20世紀の物理学における分水嶺ともいえる大理論で、現代物理学の礎としてあまりにも有名ですが、 この原著論文を読んでみると、わずか30頁あまりのなかに、理論の基礎部分が、現在でも通用するほどの完璧さで 完成されていることに驚きを禁じえません。
そして、「空間」や「時間」のような当時の物理学者が当然と考えていたような根本的対象についてさえ批判的思考を加え、 納得がいくまで考え抜くアインシュタインの科学に対する「哲学的信条」を読み取ることができます。