電子(プラス及びマイナス)、陽子、光子、中性子及び宇宙線
1935年
ロバート・アンドリュース・ミリカン(1868-1953)
 ミリカンはイリノイ州の牧師の家に生まれ、オバリン大学、コロンビア大学に学び、1895年学位を取った後ドイツへ行き、1年間プランクとネルンストの下で学んで帰国し、1896年シカゴ大学に勤め、1910年に教授になりました。その後1921年にカリフォルニア工科大学へと移り、そこで1945年の引退までノーマン・ブリッジ研究所の所長をつとめました。
 彼の最大の業績は電子の電荷を測定した事で、それを彼は驚く程単純な実験-しかし誰も考えつかない様な、コロンブスの卵の様な実験でなし遂げたのです。1906年からこの研究にとりかかりましたが、その実験というのは、上部に帯電した金属板を置いた箱をつくり、箱の中の空気にX線を照射して空気を電離し、イオン化させます。その空気中を通って上から油滴を落とします。すると時折、イオンが油滴にくっつきますが、そのイオンが上部の強力な帯電に引きつけられて、落下速度を鈍らせます。この現象を数多く観察し、落下速度を測定すれば、統計的に見て、最小の速度変化を起こしているものが、電子一個の付着の場合であると考えたのです。そうすれば重力と上部へ引かれる電気力とから、電子一個の電荷が計算できるのです。
 こうして彼は電子の電荷を決定し、また電気量は電子の電荷の整数倍である事も明らかにしました。また後に、彼は宇宙から来る放射線を調べ、これに「宇宙線」という命名をした他、アインシュタインの光電効果に対する方程式を実験的にも検証しました。本書は、彼が自分の研究を集大成として著述したものです。