一般相対性理論の基礎
1916年
アルベルト・アインシュタイン(1879-1955)
 特殊相対性理論を発表して十一年後、アインシュタインは本書において、この理論を拡張して相対性の一般理論を作り上げました。彼の師のひとりだったミンコウスキーは1908年、その「空間と時間」という論文で三つの空間座標と一つの時間座標で示される幾何学的図形として、四次元空間-時間連続体の概念を明らかにして、相対性理論に幾何学的基礎を与えていました。
 アインシュタインは特殊相対論を慣性力による単なる直線等速運動の場合だけでなく、加速や減速や遠心力、すなわち力や重力の作用する非等速運動系にも適用出来る様に拡張する事を考えていたのですが、その為には慣性と重力が等価である事を証明しなければなりませんでした。この二つはニュートン物理学では区別されてはいたのですが、奇妙にも証明なしに互いに等価であるとされていたものです。
 アインシュタインはこれを「重力の場」という概念を導入する事によって、慣性と重力の効果が統一される事を示しました。ここで重力の場というのは力ではなくて、宇宙内に分散している質量によって生成する空間=時間的量を意味します。この場の中では、物体のあらゆる運動、光さえも場の影響によって曲げられ、曲がって進みます。その事によって、惰性と重力とは統一されるのです。つまり、四次元空間=時間連続体は4次元的にある曲率で「曲がって」いる事になります。この曲がり方、曲率を持った空間の幾何学はリーマンによって、リーマン幾何学として与えられていました。こうして「場」の概念に対し、ミンコフスキー空間とリーマン幾何学を援用する事によって、アインシュタインは、ニュートン天文学を包括した、天体から量子まで宇宙に存在するあらゆるものの運動を説明できる壮大な統一宇宙論を構築したのでした。
 相対論的宇宙では、空間=時間連続体は曲がっているのですから、それは4次元的に閉じている事になります。ある意味では、アインシュタインは、ニュートンの無限宇宙を否定し、以前のアリストテレス的な閉ざされた宇宙という考えに回帰したと言えるかも知れません。