無線通信
1899年
グリエルモ・マルコーニ(1874-1937)
 マルコーニは大地主のイタリア人の父と富裕なアイルランド人の母との間に生まれ、学校へは行かず当時有名だった学者や教師を家庭教師として物理学を学びました。彼等から電磁放射の現象について教えられ、興味を持ち始めた1894年頃、ヘルツの電磁実験の事を知り、これを利用して通信に使えないかと考えたのです。彼は父親の田舎の地所でヘルツの電波発器と自分で工夫した鉱石を利用した検波器を用いて、モールス信号を伝達する実験を行いました。実験は成功しましたが、( 同じ頃ロシアでは、アルクサンドル・ポポフが同様の実験をし、成功しました) イタリアでは、この新しい無線通信という通信手段を実用化するという企画に賛同してくれる人がなく、イギリスへ渡りました。
 1896年、マルコーニは無線通信のアイデアをイギリス参謀本部、海軍省、郵政省等に売り込むのに成功しました。それから5年間を電波の到達距離と無線機の機能改良に費しましたが、その間に、1897年に、マルコーニ電信会社のの前身、無線電信会社の設立に努力しました。1899年3月、彼は世界で初めての国際無線通信をイギリスとフランスの間を結んで行ったのです。この成功は一躍有名になり、同年、イギリス艦隊は夏期演習の際、各艦との連絡にマルコーニ無線機を使用して、その価値を認めました。こうして、無線の時代が始まったのです。本書はマルコーニが、実用化した彼の無線機について書いた初めての書物です。