自然哲学及び機械技術に関する講義
1807年
トーマス・ヤング(1773-1829)
 ヤングは医師であり、物理学者であり、エジプト学者でもあるすぐれた学者また科学者でありましたが、専門にかたよらない万能学者としては最後の人といわれています。20才の若い年令でその才能を認められて王立協会に招かれ、そこで視力についての有名な論文を講演しました。この王立協会でヤングが行った講演のすべては、学会誌に発表したいくつかのものを除いて初めてこの書物として出版されました。
 これにはジョセフ・スケルトンの手になる美しい版画が入っています。この書物に収められているヤングの講演の内容は、乱視について初めて記述したこと、「エネルギー」を物体の質量に速度の二乗を乗じた積(F=mv2)として初めて用いたこと、ホイヘンスの学説に賛成して光の波動理論を作り上げたこと、潮汐のヤング理論など、ヤングの研究の主要なものについての研究経過とその成果です。電気に関しては二つの講演が入っていて、その一つは磁気に関するものでした。更に、ヤングがいわゆる「ヤング率」を導入し、現在でも一般に用いられている定義を確立した弾性に関する講演を収めています。
 これらの講演は当時における最も完全、最も正確な物理学の研究であると現在でも考えられています。チェルニンがヤングを称して「(色の知覚についての)生理光学の父」といい、後になってヤングと同じ光りの波動を研究したヘルムホルツは「この世に生を受けた最も明晰な人」であると考えていました。