重さについて、タルターリアの研究によって正された重さについての書
1565年
ヨルダヌス・デ・ネモラリウス (fl. Ca. 1220)
 ヨルダヌスは中世における最も重要な力学の研究者のひとりで、1220年頃に活躍したとされているのですが、彼の生涯については全く解っていません。13世紀の半ば頃に作られた図書目録に載っている著作に彼の名が付けられているので、その存在が知られるのですが、ネモラリウスとは「無名の」あるいは「不詳の」という意味で、実はこの頃から既にその存在が疑われていたのです。同時代にドイツのザクセンにいたドミニコ会士のヨルダヌスと同一人物とする説もありますが確証はありません。それだから、ヨルダヌスの名のもとに研究をした学者達がいたので、むしろヨルダヌス学派として考えるべきであるという見方が現在はされています。
 いずれにせよ、ヨルダヌスの名を付けられた力学や数学の論文は、写本の形で広く中世の学者に読まれたのでした。
 本書はいわゆる「斜面の法則」、つまり二つの異なった傾きを持つ斜面におかれた、異なった重さを持つ二つの球が、滑車とひもでつながっている時のつり合いの理論を、てこのつり合いの理論を用いて明らかにしたものです。また彼は、重さGをhだけ上げる力は重さmGを h/mだけ持ち上げる事が出来るという「仕事量不変の原理」-「ヨルダヌスの原理」と呼ばれた-も導出しています。この彼の理論は後に、シモン・ステヴィンによって明確に定式化されたのでした。本書の題名に「ニコロ・タルタリアによる・・・」という文が見えますが、本書はタルターリアが編集し、彼自身の注釈を加えて出版したものです。しかしタルターリアは彼自身の著作のある本の中で、このヨルダヌスの斜面法則を、自分の発見として発表し、その為盗作したとして永く非難されたのでした。