熱の解析的理論
1822年
ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ(1768-1830)
 フーリエはナポレオンの同僚であり、1801年にはナポレオンのエジプト総督であった人ですが、また固体中の熱伝導を研究した数学者でもありました。彼は固体の中の熱伝導がきわめてこみいった現象であって、それは二つの点の間の温度差、熱伝導率および固体の形態などのいろいろな要因によってきまるものであることを発覚したのです。
 この問題を解くためにフーリエは、数学的解析法の新しい、利用価値の多い応用法を発明しました。この方法はどんなこみ入った現象でも、実際は個々の現象が寄り集ったものであるとする考え方によるもので、そうすることによってどんな複雑な周期振動や関数でも単純な正規運動や単純な関数の重畳したものとして解くことを可能にするものでした。すなわち、フーリエはどんな関数でも正弦(サイン)と余弦(コサイン)の関数の一次式として級数に展開できることを示したのです。彼は複雑な熱伝導を偏微分方程式によって表わし、それを上記の方法で解きました。このようにして、フーリエは熱伝導に関する法則を確立したのでした。すなわち移動する熱量は温度差(温度勾配)に比例し、その物資の熱伝導率に依存するというものです。上に示した級数、展開の方法や熱伝導の法則はいづれもフーリエの名をつけたフーリエ級数、フーリエ変換、および熱伝導に関するフーリエの法則と呼ばれています。
 本書には十九世紀の初頭に至るまでの熱伝導についての研究のすべてが記されていて、その研究方法は後世の科学者たちに大きな影響を与えました。フーリエの数学的な方法は熱、音響、光ならびに流体運動など振動に関係するあらゆる問題を解くのに用いられたのみならず、数学解析の新しい重要な分野を作り出すことにあったのです。"