建築四書
1570年
アンドレア・パラーディオ(1508-1580)
 ルネサンス時代の多くの建築家のうちでもパラーディオがもっとも影響力のあった一人であることは疑いをいれません。彼は、ヴィチェンツァのラ・ロトンダの名で知られるヴィッラ・カプラや、ヴェネツィアのイル・レデントーレ教会などの多くの美しい大きな建物を設計し、かつ建築しました。本書には彼の設計した建築の図面等のたくさんの挿絵が入っていますが、この本の中でパラーディオは彼自身の建築理論や建築デザインが、ウィトルヴィウスやアルベルティを通じてギリシア・ローマの古典様式に由来すると述べ、美しい建築は古典によらねばならないと述べています。パラーディオの建築デザインは、彼の建築作品のみならず、本書によっても全ヨーロッパならびにアメリカ合衆国に大きな影響を及ぼしたのでした。
 つまり、本書はパラーディオ様式と呼ばれるひとつの建築様式(スタイル)を確立したものなのです。この様式の最初の首唱者はイニゴ・ジョーンズで、英国におけるこの様式の創始者となりました。1719年にレオーニによって出版された本書の英語版 にはジョーンズによる多数の注釈がついています。アメリカ合衆国三代大統領トーマス・ジェファソンは、有名なアマチュア建築家でもありましたが、このレオーニ版に影響を受けて、合衆国の公共建築物の様式をパラーディオ様式にする様に指定したほどでした。