手作り分光器で観測する児童
平成27年度COC事業地域志向教育研究プロジェクト「地域に根づく数理(数学、理科)の広場」として「KIT Jr.サイエンススタジオ」を23号館1Fのパフォーミングスタジオで5月から10月にかけて5回シリーズで開講し、このたび成功裡に無事終了した。「KIT Jr.サイエンススタジオ」は、野々市市・金沢市等、地域の小学生が科学(理科)に興味と関心を持ち、科学(理科)を楽しみながら学ぶという体験型講座で、本学の「数理の広場プロジェクト」の学生が参加者に教え伝える経験を通して数理の基礎知識、コミュニケーション力を身に着けることをコンセプトとしている。講座の内容は表に示すように、「音」「エネルギー」「光」「電気」をテーマとしたもので、子どもたちが身近な科学(理科)のテーマを学ぶことができるように、ものを作り、それを使って観測や実験をする講座となっている。 この講座には、小学3年生から6年生が参加しており、毎回ほぼ定員の20人が熱心に継続的に参加した。また、「数理の広場プロジェクト」の学生3人は、テーマごとに事前学習を行い、資料の準備やプレゼンテーション、講座の運営、児童の指導などを行った。なお、プロジェクトの担当教職員を含む、センター教職員約10人が毎回の講座の企画やプロジェクト学生の指導や、参加児童の指導等、運営のサポートを行った。
第1回の「身近なものを科学の目で見てみよう!」は5月30日に、、第2回講座の「音ってなんだろう!?~音を集めてみよう~」は6月27日実施している。ここでは、第3回講座の「My風車で自家発電~電気のできるしくみを見てみよう~」、第4回講座の「手作り望遠鏡で君もガリレオ!?~光とレンズの仕組み~」、第5回講座で「紙とインクで回路を作る~回路ってどんなもの?!~」について紹介する。
参加した小学生19人は、まずプロジェクト学生から「風が、風車を回し、その回転力が発電機によって電気エネルギーに変わる様子」の解説を聞き、エネルギーの変換について学んだ。
その後、児童一人ひとりがケント紙を使って、思い思いの風車の羽根をデザイン・工作し、モーター(発電機)を取り付けた三脚を使った風車架台を製作し、オリジナルの風車に仕上げた。その後、実際に発電ができるか確認するため、My風車に扇風機から風を送り、風車の回転によって発生した発電エネルギーでLEDを光らせた。またMy風車のデザインの出来栄えを競う「デザインコンテスト」を行い、全員投票で優秀作品を選んだ。
児童たちの中には、あっと驚く羽根のデザインをする子がいたり、効率よく回転するように熱心に羽根の形状を工夫する子がいたり、個性あふれる楽しい講座となった。
My風車のデザインコンテストで優秀作品を選ぶ児童たち
この講座はレンズの仕組みや光の色を、手作り望遠鏡や、手作り分光器で実際に観測し、理解する講座である。
参加した12人の児童は、講座の前半では、月の満ち欠けに関するクイズに答えた後、プロジェクト学生からの望遠鏡の仕組みとレンズの性質に関する解説に耳を傾けた。その後、児童たち一人ひとりが2枚の凸レンズからなる望遠鏡を製作し、その望遠鏡の性能を視力表で確かめ、レンズの組み合わせ効果について体験した。更に、月を観察したガリレオに倣(なら)い、手づくり望遠鏡を使って、模擬の月の満ち欠けを観察してその様子をスケッチした。
講座の後半では「光には色が7色ある」という光の性質について説明を受けた後、実際に光の色を見るため、回折格子シートを使用した手作り分光器を組み立てた。児童たちは、製作した分光器を使って、白色光や、ナトリウムランプの光等を観察し、白色光が色分かれして7色の連続スペクトルに見えること、ナトリウムランプの光が3色の輝線スペクトルに分かれることなどを実際に目で確かめ、光の不思議を楽しんでいた。参加児童の中には、「絵の具ではいろいろな色を混ぜると黒色になるのに、なぜ光は逆に白くなるの?」と鋭い質問する児童もおり、対応者が答えに窮する場面も見られ、指導する学生や教員にとっても、学習意欲を触発される経験が多い講座となった。
今回は、銀素材を含む特殊インクで電気回路の一部である「線路」を紙に描くことで、電気回路がどのようなものかを学ぶ講座である。
参加児童18人はプロジェクト学生から「電気回路の基礎や電気抵抗の仕組み」について解説を聞いた後、実際に「鉛筆の芯の線路」「銅箔の線路」「光沢紙に書いたインクの線路」等に電気を通して、デジタルマルチメーターで電気抵抗を測った。それぞれの線路に電気が通ることを体験し、特殊インクで描いた線路が銅箔の線路と同等の働きをすることを確かめた。
電気回路について学んだ後、三つのグループに分かれて、①LEDライトが点灯する紙の車②ルームライトをLEDと透明プラスチックカップで製作③LEDが輝くモビールの製作に取り組んだ。当初は全員に3種類の工作を体験してもらう予定であったが、参加児童たちの創作熱意により時間が延長となったため、製作するものを2種類とし、それぞれが希望する工作を行うこととした。
「KIT Jr.サイエンススタジオ」の最終回にふさわしく、児童たちが科学の面白さ、不思議さに目を輝かせ、盛り上がった講座となった。 講座の終了に引き続き、修了式が行われた。修了式では、出席者全員に「修了証」を渡し、5カ月にわたり熱心に参加した児童たちをねぎらい、それぞれの今後の成長を願った。 全5回の講座では、毎回、参加者にアンケートを実施して、講座の感想や意見を聞いた。その結果、それぞれの講座でそのテーマについて子どもたちから「科学に興味をもって楽しく取り組めた」「実験がよかった」「勉強になった」などの感想が寄せられており、科学に対する興味への第一歩となったことがうかがえた。
紙とインクで電気の回路をつくる児童
また、今回のシリーズの運営を行い、参加児童を指導した「数理の広場プロジェクト」の学生たちは、回を重ねるに伴い、講座の企画やプレゼン資料の作成などの準備に積極的に取り組めるようになり、学生と教員と参加者が一体となった学習イベントを作り上げていった。当初、児童との接触が苦手で、なかなかうまく小学生に溶け込むことができなかった学生も、後半は自信をもって小学生に接して教えることができるようになり、著しい学生の成長を垣間見ることができ、この経験は今後の彼らの成長に必ずつながると確信した。
テーマ名 | 日程 | 学習内容 |
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KIT Jr.サイエンススタジオ開講式 第1回:身近なものを科学の目でみてみよう! |
平成27年 |
第1回は、光、音、電気、力、エネルギー、普段身近にあるさまざまな現象を 「科学の目」でみて、それらがどんなものかを感じて理解してみよう! 科学の目で「光」・「電気」・「音」を見てみると、楽しい世界が広がって、新し い発見がいっぱい見つかるぞ♪ 【キーワード】電気とエネルギー・光・音 |
第2回: 音ってなんだろう!? ~音をあつめてみよう~ |
平成27年 |
音ってどんなものか知っていますか? |
第3回: My風車で自家発電 ~電気のできるしくみを見てみよう~ |
平成27年 |
皆さんは、どうのように電気ができるか知っていますか? 第3回は、風車を使った風力発電について学びながら、電気とエネルギーの関 係を学習します。 電気ができるまでを体験して、My風車で君も、エコロジストになろう! 【キーワード】電気・発電・エネルギー |
第4回: 手作り望遠鏡で君も ガリレオ!? ~光とレンズの仕組み~ |
平成27年 |
望遠鏡はどうして遠くまで見ることができるのでしょうか? 第4回は普段使っているメガネや虫眼鏡のようなレンズと光について考えます。 晴れた日の夜、手作りの望遠鏡をのぞいて、月のクレーターや天の川をみて、 君もガリレオになろう! 【キーワード】光線・光の屈折・レンズの仕組み |
第5回: |
平成27年 |
日常使っている電気製品は、部品を回路としてつなぐことで、働くことができる。回路をつなぐとは、どんなことなのでしょう、最終回は、回路を特殊な導電性インクマーカーと紙を使い作ってみます。 いろいろな電気回路をつくり、楽しみながら電気の原理を学習してみます。 【キーワード】電気、回路、エネルギー 修了証の授与 |