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お知らせ(平成26年度)

イルカの獣医と世界初を一緒に作りませんか?
「水族館と ものづくり」公開講演会 開催

2014.12.13

講演をする植田博士

 KITサイエンスミュージアムプロジェクトの一環として、沖縄美ら海水族館の獣医師である植田啓一博士を講師に招き「水族館とものづくり」をテーマに公開講演会が昨年12月13日(土)、扇が丘キャンパス12号館イノベーションホールで開催された。

  植田氏は、病気で尾びれの大半を失い、泳ぐことをやめてしまったバンドウイルカの「フジ」に、ブリヂストン社の協力を得て世界初の人工尾びれを作製して、仲間のイルカとの生活を取り戻させるというプロジェクトを成功させた。この話題はマスコミでも大きく取り上げられ、多くの人々の知るところとなった。

  一般的に「水族館」とは水槽の中の魚やイルカショーを見せる場所であり「ものづくり」のイメージとは結びつかないかもしれない。しかし、動物園や水族館の社会的役割は①教育②レクリエーション③自然保護④調査研究と多岐にわたる。中でも調査研究の究極の目的は「より良き飼育に資すること」つまり、いかに上手に動物たちを飼育するかという事に尽きる。その目的を達成するために、植田氏は獣医師の立場から「水中で生活するイルカや魚たちの健康を守るためには、まだまだやるべきことがたくさんあります。いろいろな『初めてのチャレンジ』が必要です。私たちに、ものづくりのプロのアイデアと技術を貸して欲しいのです」と語る。

  現在、沖縄美ら海水族館ではCT、レントゲン撮影装置、内視鏡、超音波画像診断装置(エコー)等各種の医療機器を導入して診療や治療に役立てているが、内視鏡には医療機器メーカーと協力してイルカ用に改良を施している。また哺乳類であるイルカとは違い、陸上に取り上げられないジンベエザメやナンヨウマンタの検査のために、エコー装置には水深40mでも使える防水装置を開発し、獣医師や看護師が水中に潜って処置や検査できるシステムを作り上げた。また、弱って海岸に打ち上げられたイルカたちを救うために、救急医療用の医療機器を搭載した救急車を作製して機動性を確保するなど、積極的な取り組みを続けている。植田氏は、それらの様子を、動画をふんだんに駆使しながら、歯切れの良い語り口で紹介した。

  当日は、暴風雪の予報も出ており天候に恵まれなかったが、小学2年生から一般まで、総勢41人が参加。途中5分の休憩をはさんだものの、90分を超える長時間の講演に全員が熱心に耳を傾けた。対象年齢を幅広くとったにもかかわらず、アンケートの結果を見ると各年代に好評であったことがわかる。

  参加者の感想の中に「僕はイルカの人工尾びれを作るのがとても難しいことが分かりました(小4)」「今後の進路を考える上で、とても参考になること、考えていくべきことを学ぶことができた(大学生)」「バイオと工学がリンクしたプロジェクトに私もいつかチャレンジしてみたい(大学生)」「今後の技術の進化に期待。企業の協力の重要性も感じた(会社員)」「大事な事は高い技術力とスタッフの共同運用。また、取り組んだメンバーたちの情熱を感じた(会社員)」等もあり、演者と主催者の意図が充分に伝わったと思われる。

  更に、講演終了後に講演者へ個人的に質問ができる時間を設けたところ、中学生から大学生までの6、7人が壇上に質問に訪れ熱心に話し込み、なかなか会場を閉じられないほどであった。講演者によると、工学を専攻する学生ならではの機器の形状への提案や、仕事をする際のモチベーションに関する話などがあり大変興味深く、今後も必要な試みであると再確認したとのことである。今後もこのような講演会を開催したい。


参加者全員のアンケート結果

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