平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

地(知)の拠点

ホーム > お知らせ > 平成26年度一覧

お知らせ(平成26年度)

数理工教育研究センター「KITサイエンスシティプロジェクト」
第2回「公開講演会」開催

2014.11.15

高校生目線に立って実験のサポートをする本学の学生

 「地(知)の拠点整備事業(COC事業)」の一環として「平成26年度地域志向教育研究プロジェクト」に採択された、数理工教育研究センターの「KITサイエンスシティプロジェクト」は、本学の学生(基礎物理の履修者約150人)、地域の高校生(金沢市立工業高校、金沢泉丘高校、金沢錦丘高校、七尾高校、小松高校、金沢二水高校、野々市明倫高校から引率教諭を含み約60人)を対象として「第2回KITサイエンスシティプロジェクト公開講演会」を、11月15日(土)、多目的ホールおよび23号館4階で開催した。
第1部は「サイエンスリテラシー講演会」を同日午前に開催し、第2部「物理実験セミナー」を同日午後に開催した。(詳細はプログラム参照)


講演をする高千穂大学の並木学長

 第1部の「サイエンスリテラシー講演会」では「何故、科学と技術を学ぶのか」と題し、高千穂大学の並木雅俊学長から「科学は、原因と結果を結び付け、それを説明する学問であり、工学は、ものを作る学問である」という科学と工学の違いや、科学の歴史を踏まえて、学生や生徒がこれから学ぶべき方向(学問)を系統的かつ啓蒙的にわかりやすく講演を頂いた。日頃このような視点からの講演になじみの少ない学生や生徒にとって、自らの将来への考え方や心構えを教えていただく貴重な体験となった。

 続いて「物理実験と実験レポート作成のポイント~ノギス、汎用注射器を使用した大気圧の測定~」では「台ばかりで大気圧を測れるか?」をテーマに実験レポートの作成について近藤泰洋(元)東北大学教授から講演いただき、数理基礎教育課程の田中忠芳准教授が実演と説明を行った。聴講する学生や高校生たちは、それぞれ2人1組となり、実験シートに沿って汎用注射器の内径の計測し、壇上での台ばかりを使った大気圧測定の演示実験の結果を基に所定の計算を行い、グラフ化し、その結果から、大気圧や測定値の誤差を推定した。
 聴講する大半の学生や高校生にとって、この種の実験が初めてということもあり、測定やデータの処理にかなり手間取っていたが、基礎物理担当教員や、高校の引率教員の助言によって、最後には実験の結果を導くことができ、納得して満足げな学生や生徒も多く見られた。

 第2部の「物理実験セミナー」では、はじめに「物理学・化学との出会い」と題して、高校時代に「物理オリンピック」で優秀な成績を収めた経験のある舘農悠紀氏から、自らの高校生時代を振り返りながら、大学時代での物理学との出会い、それがきっかけとなり現在の会社に就職したこと、更に現在進めている研究分野の苦労や将来性を語っていただいた。

 続いて「LEDを用いたプランク定数の測定」では、近藤先生から、今回の実験課題の理論、実験の手順、解析方法の解説や、実験の進度に合わせた指導を頂いた。
 今回は、第1回の実験セミナーで経験を積んだ、本学の「理科教育法Ⅱ」履修学生16人が、参加高校生約50人のサポート役となり、高校生2人+学生1人のグループに分かれて実験を行った。
 実験では、まず、ブレッドボード上でLEDを点灯させる回路を製作し、赤、緑、青、紫色のLEDについてそれぞれの発光開始電圧を測定して光のエネルギーを求めた。次に回折格子による回折現象を利用して、それぞれの色の光の波長と振動数を測定し、得られたデータからエネルギー対振動数のグラフを描き、直線フィットしてその傾きからプランク定数を求めた。その際、データ点のばらつきを考慮して誤差を見積もる方法も学んだ。
高校1、2年生にとってプランク定数や光の回折現象は、未習の内容のため難解な点も多く含まれていたが、生徒たちは教職を志す本学学生の高校生目線の指導により、一所懸命に課題に取り組み、測定結果に満足していた。

 今回参加した高校生と引率された教員からのアンケート結果をまとめた。

自由意見(抜粋)
  • 並木先生の講演では科学の歴史や日本独特の「科学技術」という概念について興味深いお話しをして頂きました。実習では参加者に実際に生徒・学生にグラフを作成させたところが良かったと思います。
  • レポートの書き方が気になっていたので今回の講演で聞くことが出来て良かったです。
  • 実験結果からどのようにして大気圧を計算するかについて考えさせる時間を確保できるともっとよかったと思います。
  • 話がゆっくり過ぎて、実験の時間が無くなってしまうと心配していたらまさにその通りでした。
  • 実験は全チームが台秤を使うのだと思い、先生と代表生徒の実験値をメモしそびれた。シリンダー内径は入り口部分にぬけ防止の段差があるので、正しく測ることはできなかったと思う。そしてグラフを描くには至りませんでした。
  • 方眼紙を用いて傾きを求める作業や、ブレッドボードを用いた回路の作製など、普通科の高校生にはあまりできない経験が出来て良かった。回折角測定装置の出来が素晴しかった。(本校にも1台欲しいです)
  • 周りの人と協力して実験を行えたことが良かったです。学生の皆さんのアドバイスもあり理解しながら作業を行うことが出来て良かったです。
  • 学生さんが熱心に指導してくれて良かった。彼らの成長の機会にもなったと思う。

 今回の公開講演会では「実験をまとめる時間が少なかった」「内容が高校1、2年生に難しい」など、時間配分や、講演会内容に関する厳しい意見もあったが、全体的には本講演会の趣旨が参加者に理解され、特に本学学生や生徒の成長に有意義なものであったと思われる。
 今後も、本学の学生と地域の高校生とがサイエンスに触れ、共に学ぶことで、大学生には学生としての学びのイノベーションを、高校生には科学を学習するきっかけを提供できる学習イベントを実施していきたいと考えている。

プログラム

第1部/サイエンスリテラシー講演会(多目的ホール)
対象:金沢工業大学「基礎物理」履修学生、地域の高校生
9:30~10:00 「何故、科学と技術を学ぶのだろうか」
並木 雅俊 氏(高千穂大学 学長)
10:00~11:30 物理実験と実験レポート作成のポイント
~ノギス、汎用注射筒を使用した大気圧の測定~」
 近藤 泰洋 氏(元・東北大学 教授)
 田中 忠芳 氏(本学・数理基礎教育課程・准教授)
 
第2部 物理実験セミナー(23号館4階(23・409室))
対象:地域の高校生
13:00~13:30 「物理学・化学との出会い」
 舘農 悠紀 氏((株)ニコン)
13:30~15:30 「LEDを用いたプランク定数の測定」
 近藤 泰洋 氏(元・東北大学 教授)
 江尻 有郷 氏(元・琉球大学 教授)
15:30~16:00 まとめ、実験器具の後片付け、アンケート・感想記入
閉会のあいさつ
 青木克比古(本学・数理工教育研究センター所長)

ページトップへ

金沢工業大学 産学連携局 連携推進部 連携推進課

〒921-8501 石川県野々市市扇が丘7-1 TEL 076-294-6740 FAX 076-294-6706