平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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お知らせ(平成26年度)

COC事業「H26地域志向教育研究プロジェクト中間報告会」を開催

2014.08.20

 H25文部科学省選定・地(知)の拠点整備事業「地域志向『教育改革』による人材育成イノベーションの実践」における、平成26年度の地域志向教育研究プロジェクト活動の中間報告会を平成26年8月20日(水)12号館イノベーションホール・アントレプレナーズラボにて開催した。対象となった17プロジェクトは学内公募をし、学長裁量によって選定された事業で、COC事業が目指す地域との連携とカリキュラムの連動をモデルとしたプロジェクト活動である。各プロジェクトには複数の教員たちが担当し、教育面・研究面で連携しながら、地域に成果をもたらす活動をおこなっている。報告会は各プロジェクトから学長に中間活動報告をおこなうことを趣旨としていたが、他の教職員にも公開し、教員の教育研究活動への理解と学内の周知を図った。

 会場には約60名の教職員が参加。はじめに他大学のCOC事業の事例紹介として、岩手大学の工学部 教授 岩渕 明 氏に「岩手大学における地域志向教育研究活動の目指すもの」として講演いただいた。岩手大学も平成25年度にCOC事業の選定を受け、「地域と創る“いわて協創人材育成+地元定着”プロジェクト」を推進している。岩渕氏はCOC事業を推進する責任者として、地方国立大学であること、東日本大震災からの復興対応という地域課題を責務とした中で、大学卒業後の地元企業への就職率の低さ(人材定着)を地域の大きな課題に対して大学のやるべきことを見出しているという。17の市と協定、7市にサテライト設置、大学主体による地元企業とのネットワークの強みを活かし、学生に地元企業の魅力を理解してもらうため、学部の壁を越えた地域連携・自治体へのインターシップの拡充、地域貢献科目の1年次必修化、学生発案のプロジェクトを学内カンパニーとしてビジネス実践をするほか、教員の研究や学生の卒業論文・修士研究の受託研究に対して、地域課題を対象に学内助成制度を設け積極的な地域連携活動を推進している。震災復興に対しても、「復興学」「地域防災学」などを開設したり、復興支援関係の研究を支援しているという。

 プロジェクトの詳細については伺うことはできなかったが、「人材定着」は地域にとって大きな課題であり、金沢市・野々市市においても同様である。今後は北陸新幹線の開業に伴い、人口流出に対する課題は大きくなり、地域を支える人材育成をどのように地域内で育てていくか、地域・大学・地元企業と連携がますます重要であると感じた。 基調講演後は、本学の地域志向の取組について、17プロジェクト中6プロジェクトがプレゼンテーション、11プロジェクトがポスターセッションをして、これまでの活動と今後の活動計画についてプロジェクト担当教員が発表した。

 プレゼンテーションによる発表では、各プロジェクトの代表教員から報告が行われ、石川憲一学長から質疑・コメントをいただいた。会場の参加者からの質疑応答では、「専門科目との連携はどうやっているか?」「地域に対する教員と学生の役割」等について質問が寄せられ、それぞれのプロジェクトの特徴を活かして対応していることが報告された。また、COC取組責任者である佐藤副学長からは「地域の課題に取り組むには、企業や大学など連携する人々が一緒に地域の状況をしっかりと捉える必要がある。COC事業的にも学生における授業との連携は大きなポイントで、基調講演だけでなく、プロジェクトに参加している学生が授業の中で取り組み成果を発表するなど、授業との連携をぜひ推進していただきたい(基礎知識から応用への展開も必要)。そして地域の課題に対応するには学部・学科をこえた連携によって総合的な取組・全学的な取組が必要であり、今後は全学科から多くの教員が地域志向の取組に参加してくれることを期待している。」と今後の期待を述べられた

 ポスターセッション会場では、石川学長が全プロジェクトブースを回り、プロジェクト担当者からこれまでの活動と今後の予定について報告を受け、質疑とコメントを直接伝えた。

 最後に石川学長が総括として「皆さん、素晴らしい取組を実践されていることが良く分かりました。年度末までの残り半年間、更なる成果をあげられることを期待しています。」とエールを送って報告会を終了した。

 今年度、初めて中間報告会を開催したが、発表を聴講していた他の教職員からは「非常に活発に活動されていることに驚いた」「地域連携の多様性を感じた」「学内プロジェクト主体を地域住民に技術移転し、そこに学生が参加するという形が参考になった」といった声が聞かれた。一方、「このような報告は地域向けに公開するべき」「学生に発表してもらうほうが良い」「シラバスに地域連携を入れるには科目代表の教員の協力が必要」「授業のほかにプロジェクト業務負担の増加はきつい」など課題に対する意見もあり、学生や教員への更なるサポートの必要であると感じた。 COC事業は5年間の事業として平成29年度まで実施する。学長裁量による「地域志向教育研究プロジェクト」は毎年公募を行っていくが、地域に根ざした大学存在の価値創出に向けて、より多くの教員がこの制度を活用し、学生の教育の場、研究の場として成果を上げていけるよう広く周知し、サポートしていきたいと思う。(なお、中間報告会の様子はNet-Avisで視聴することができる。 COC事業ホームページhttp://www.kanazawa-it.ac.jp/prj/index.html)

プレゼンテーションによる活動報告

① ポジティブ心理学を活用した地域におけるメンタルヘルスのボランティア育成
<心理科学研究所 教授 塩谷 亨、他2名>

 臨床心理学専攻の授業科目と連動したプロジェクト活動。一般市民間の相談活動、コミュニケーションの活性化を目指し、市民カウンセラーを養成する講座を大学院生主体で実施。1年次の「臨床心理基礎実習」にてワークショップ企画、ヒアリングスキルの向上を図り、10月以降に全6回で野々市市民カウンセラー養成講座を開催する(一般参加募集中)。次年度は2年次「臨床心理地域援助特論」においても実践を検討中。

② 情報セキュリティ・スキルアッププロジェクト
<情報工学科 教授 五十嵐 寛、他3名>

 情報セキュリティ・個人情報保護関する事件・事故が増える中、情報セキュリティ技術者の育成が求められる。学生のスキルアップ、学習意欲向上を図ると共に、地域住民への啓蒙活動を学生とともに実践していく。今年度は有識者による講演・勉強会の実施、金沢市立泉中学校、芝原中学校にて啓蒙ボランティア活動に参加。今後は授業科目(ネットワークセキュリティ統合特論、ネットワークとセキュリティ、ITシステム基礎 等)と連携しながら必要なスキル定着を目指す。

③ Toiro(Total Instruction program Re-Organizing multiple subjects)プロジェクト
<建築デザイン学科 准教授 下川雄一、他3名>

 実際の現場で必要とされる技術の総合化を体験するとともに、地域に成果物を残す。学年(習熟度)に合わせながら、デザイン、設計、施工、都市計画分析、BIM(Building Information Modeling)と他専門の技術の融合による建築物件の設計を行う。専門スキルのベースは授業科目「建築総合演習」「建築CAD」「空間メディア」等多数の科目を通して習得を図る。今年度は、1、2年生は地域イベント参加に参加しながらデザインに関する学習を、3年生は富奥公民館前のっティバス停の設計、野々市シャルソンモデルルート設計、4年生・院生は、建築家や異分野の連携を通しながら木造新築物件の設計を行う。

④ KITサイエンスシティプロジェクト
<数理工教育研究センター 教授 青木克比古、他4名>

 地元小中高校生を対象とした物理実験コンテンツ作成・配信、サイエンスカフェを企画・実施し、本物の物理の楽しさ・興味関心の向上、教職を目指す学生の科学教育力の向上を図る。今年度は授業科目「基礎物理」の授業実験風景の撮影を行い、今後は学生による物理コンテンツの作成を行う。また高校生向けのサイエンスリテラシー公開講演会を開催し、地元高校生に物理の楽しさ・理解向上を図った。今後は小学生を対象としたサイエンスリテラシー講座を開講する。

⑤ 防災プロジェクト
<建築デザイン学科 教授 後藤正美、他5名>

 産学官民の協同による地域防災力の向上を図る。今年度は野々市市・町内会等の単位で、地域住民とフィールドワークで家屋や道路の現状調査、避難誘導ステッカーのデザインの提案を行った。今後は建築物の倒壊シミュレーション、延焼シミュレーションの実施、ステッカーの有効性を検証していく。また、プロジェクトデザイン教育や専門科目との連携については、カリキュラムの見直しも視野に入れながら、検討していく。

⑥ まちづくり再生プロジェクト
<メディア情報学科 准教授 山岸芳夫 他2名>

 既存のRDA(Re-Design Apartment)プロジェクトとCirKitプロジェクトの連携により工大周辺の地域活性化を目指す。RADプロジェクトはハード的サポートとして付加価値をつけたアパートの再設計を、CirKitプロジェクトはソフト的にデジタルサイネージを使って地域情報を配信する。今年度はRDAが設計したアパートやイベント時に活用できる屋台を製作し、それにCirKitが製作したコンテンツをデジタルサイネージで配信する連携を調整し実現に向けて取り組んでいる。

ポスターセッションによる主な報告内容

1 エコハウス創造提案活動プロジェクト
建築学科 垂水 弘夫 他2名
いしかわエコハウスと金沢町屋のバス見学。熱環境、光・照明環境の視点からエコハウス創造提案。タウンミーティング開催予定。
2 空間デザイン研究:アクティビティを創発させる可変型空間装置と感性情報の共働
建築デザイン学科 川﨑 寧史 他6名
あかりのオブジェや映像、構造体を用いて金沢中心部の魅力や新たな都市アクティビティを創出する。企業や行政と勉強会・実証実験を実施。
3 Machine Tools Enthusiast(MaTE)プロジェクト
機械工学科 森本 喜隆 他9名
地元製造業の企業内における専門的な設計・加工方法の勉強会を実施。地元の貢献できる熱狂的な工作機械エンジニアの育成を目指す。
4 マーケティング調査法講習会による野々市市の商店街活性化プロジェクト
心理情報学科 神宮 英夫 他2名
地元商店を対象にマーケティング手法を活用して経営戦略を提案。調査方法をマニュアル化し商店が自立して戦略できるようにする。
5 空間情報プロジェクト
環境土木工学科 鹿田 正昭 他4名
学生・地域向けの講演会・BIM/CIMの勉強会、音風景に関するガイドマップ・ワークショップを開催。修得した知識・スキルで地元子供向け講座を開講。
6 夢考房ジュニア
ロボティクス学科 出村 公成 他4名
地元子供向けにロボットとプログラミング教育を実施。計画・運営は学生が主体。地域貢献イベントを実施しイノベータ人材輩出を目指す。
7 KITサイエンス・ミュージアム教育研究プロジェクト
基礎実技教育課程 伊藤 隆夫 他2名
予備実験の体験を通して、授業やサマーサイエンススクールで行う実験を提案。教職希望学生は高校で実験授業を実施予定。
8 循環型エネルギー地域活用プロジェクト(金沢市)
建築デザイン学科 宮下 智裕 他2名
学生と企業が協同し、竹の廃材(チップ)から出る発酵熱を冷暖房の熱源として用いるシステムの開発を目指す。産学連携の体制を整備し実験を推進している。
9 eラーニングによる地域住民と本学学生の染色体・遺伝子解析技術 教育システム 
応用バイオ学科 坂本 香織 他2名
地域発染色体解析技術者の育成・ヒトゲノムプロジェクトの啓蒙を目指し、染色体検査・遺伝子検査スキルをeラーニング教育で実践。
10 Cool Kanazawa コンテンツの創造とその科学的基盤作り
メディア情報学科 山田 真司 他2名
アニメ等のCoolJapanコンテンツの科学的設計基盤を作り地域活性化へ。地元ゲーム製作会社から専門的技術を習得中。シンポジウ開催予定。
11 医工連携プロジェクト
機械工学科 新谷 一博 他9名
教員テーマに合わせて医工融合技術を生かした医療機器の提案開発。近隣企業や医療従事者からの外部評価を受けながら実用化を目指す。

岩手大学のCOC事業の取組を紹介する
工学部 岩渕 明 教授

石川学長にポスターセッションで報告を行う
プロジェクト担当教員

佐藤副学長にポスターセッションで報告を行う
プロジェクト担当教員

学部・学科を越えて情報交換を行う教員たち

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