記事詳細

戻る

電気電子工学科小山正人教授が電気学会産業応用特別賞 技術開発賞を受賞。
規範モデルを用いたモータの2自由度制御技術や大容量可変速インバータ制御技術など、
産業応用部門の新技術発展に多大な貢献をしたことが評価

2017年10月23日UP

 受賞した小山正人教授(写真左)



金沢工業大学工学部電気電子工学科の小山正人教授が、一般社団法人電気学会の産業応用特別賞 技術開発賞を受賞しました。


産業応用特別賞技術開発賞は「電気技術に関する新製品、設備の完成あるいは改良において顕著な成果をあげた者」を対象に一般社団法人電気学会産業応用部門が表彰するもので、受賞対象者は毎年わずか1名という名誉ある賞です。


小山教授は、交流モータの可変速技術について長年にわたり研究開発に取り組み、規範モデルを用いたモータの2自由度制御技術や大容量可変速インバータ制御技術など、産業応用部門の新技術発展に多大な貢献をしたことが評価されました。


【受賞対象となった小山教授の功績】
クリーンな電力の変換を行うパワーエレクトロニクス機器は、省エネルギー化に貢献するため、家電から産業・交通・電力に至るさまざまな分野で使用されています。パワーエレクトロニクス機器には、直流電圧を大きさが異なる直流電圧に変換するDC/DCコンバータや、直流電圧を交流電圧に変換するインバータなどがあります。国内の全発電量の50%以上がモータに使用されていますが、インバータは交流モータの回転速度を変化させるために幅広く利用されています。例えば、電気自動車ではインバータを用いてバッテリーの直流電圧を可変振幅・可変周波数の交流電圧に変えることによって、電気自動車を駆動するモータの回転速度を自在に変化させています。


今回受賞対象となった小山教授の功績は主として以下の3点があげられます。

1)交流モータの大容量可変速インバータ制御

1980年代までは、可変速制御モータとしては直流モータが主流でした。直流モータは直流電圧を変えるだけで回転速度を調整できるという長所があります。その一方で、整流子とブラシによる機械的な整流機構が用いられているため、摩耗したブラシの定期的交換が必要という保守性の問題がありました。そこで、機械的な整流機構を持たない交流モータによる可変速制御のニーズが高まりました。1971年代の前半にベクトル制御という誘導モータの可変速制御法の原理がドイツで発明されました。この方法は、誘導モータのトルク(力)や回転速度を直流モータと同等の応答性や精度で制御できる方法です。また、1978年には16ビットのマイクロプロセッサ8086が発売開始され、モータの制御装置を従来のアナログ制御からディジタル制御に置き換えることが可能になってきました。このベクトル制御とマイクロプロセッサの登場によって、国内では誘導モータの可変速制御装置の本格的普及に向けた研究開発が活発化しました。


小山教授は1980年代初めから研究開発に取組みました。最初の適用目標は、鉄鋼圧延プラントで使用される数千kWを超える大容量誘導モータの可変速駆動用インバータでした。小山教授は、マイクロプロセッサによるディジタル制御に適したベクトル制御方式の研究開発を行い、本インバータの実用化開発に貢献しました。開発成果はその後、永久磁石同期モータの可変速制御にも応用され、電気鉄道、エレベーター、FA分野で使用されるACサーボや汎用インバータなどに適用されています。



2)規範モデルを用いたモータの2自由度制御技術開発

交流モータの回転速度を調整する場合、回転速度の目標値と検出値との偏差が0になるように制御装置を用いてモータに加える電圧の大きさや周波数を変化させるフィードバック制御方式が一般的に使用されています。しかし、この制御方式はモータの回転速度を検出して目標値と比較してからモータに加える電圧を変化させるため、回転速度を速く変化させようとすると回転速度が振動しやすくなるという問題があります。

この問題を解決するために、小山教授は規範モデルを用いた2自由度制御方式を開発しました。この方式は、モータの数式モデルを制御対象として構成した理想のフィードバック制御系(規範モデル)と従来のフィードバック制御系とを組み合せた制御方式です。回転速度の目標値を変化させた時は、規範モデルと同じ応答でモータの回転速度を変化させることができます。数式モデルと実際のモータに誤差がなければ、目標値の変化を速くしても回転速度に振動は発生しません。また、モータが駆動する機械からモータに負荷トルクが作用した時は、従来のフィードバック制御系が速度変動を低減する働きをします。このように、本制御方式は目標値に対する応答と負荷トルク(外乱)に対する応答を独立に調整できることから、2自由度制御の一方式と言えます。これに対して、従来のフィードバック制御方式は、両者の応答を独立に調整できないため1自由度制御方式です。


小山教授が提案した2自由度制御方式は、モータの回転速度だけでなく回転角の制御にも容易に適用できるという特長があります。



3)生きた知識・技術の次世代への伝承

小山教授の3つ目の功績は、インバータによる交流モータの可変速制御技術の開発に黎明期から携わってきた経験を活かして『パワーエレクトロニクス入門(改定5版)』(オーム社 2014年 共著)や『ACサーボの理論と設計の実際』(総合電子出版社 1990年 共著)を執筆したことです。

「小説を読むと主人公を通じて疑似体験ができるが、工学書には小説のようなものがない。よって学生には、教科書や参考書に書いてあることを覚えるだけでなく、書いてある数式の途中計算を自分でやってみたり、また最初に出てくる数式がどこから出てきたのか自分で調べたりして疑似体験する努力をして欲しい。この疑似体験を重ねることによって「自分で考える力」がつくと思います。野菜作りに例えるならば、ピーマンよりタマネギ、タマネギよりジャガイモを目指して欲しい。一方、教える側では、生きた知識や技術を次世代に伝えるために、どんなことをどんな風に文書として残すかを考え続ける必要があると思います」と小山教授は語ります。