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建築学科・山岸教授らが重量床衝撃音を低減させて室内の静ひつ性を高める
TMD内蔵スラブを開発

2017年4月7日UP

金沢工業大学建築学科の山岸邦彰教授は、三井住友建設株式会社と油化三昌建材株式会社と共同で重量床衝撃音を低減できるスラブ(”SST”; Silent Slab using TMD, 特許出願中)を開発しました。

重量床衝撃音とは子供の飛び跳ねや人の歩行により生じる低く、鈍い音のことであり、マンションなどの集合住宅における苦情の原因の一つでもあります。床を支える構造物をスラブと言いますが、山岸教授らはTMDを内蔵させたスラブを開発し、スラブを厚くすることなく重量床衝撃音を低減させることに成功しました。

TMD(Tuned Mass Damper)とは、振動する物に対して、ある周期で振動する質量の小さい「おもり」がついた振動体を設置することにより、その周期付近の振動を低減させることができる仕組みのことをいい、この原理は古くから知られています。しかし、この仕組みを安価に導入することが課題であり、コンクリート板と発泡スチロール(EPS)でTMDを構成した点が本開発のポイントです。

TMDによる重量床衝撃音の低減のイメージ

開発の経緯と本技術の概要

集合住宅やホテルなどの室内の静粛性を求められる建築物では、人の歩行や飛び跳ね等による重量床衝撃音を小さくすることが要求されます。その場合、スラブを振動しにくくするためにスラブを厚くすることが一般的に行われていますが、スラブを厚くすることは建物重量の増加やコストアップの原因となります。そこで、スラブ内の強度が必要とされない部分に「ボイド」と呼ばれる発泡スチロールの塊(かたまり)を挿入したボイドスラブとすることにより、建物重量やコストの減少を図っているのが現状です。

今回開発したSSTは、この「ボイド」に着目し、ボイドの内部におもりとしてのコンクリート板を包み込むことにより、ボイド自体がTMDとなります。また、SSTはEPSとコンクリート板の接触部の形状を工夫することにより、重量床衝撃音が問題となる周波数域での振動を低減させることができます。

SSTについて、1/3縮尺模型実験によりTMDを設置したスラブの振動低減効果を確認し、さらに実寸試作モデルによる固有振動数確認実験によりTMD内蔵ボイドの妥当性を検証しています。

TMD内蔵スラブ断面(イメージ)

左:1/3縮尺模型実験状況 中央:固有振動数実験状況 右:開発したSSTボイド

特徴

(1)施工性

SSTは、従来品と同一形状のボイド材を使用するため、従来のボイドスラブと同様に施工することができます。SSTは、特別な材料や装置を使用せず、従来の建築物に使用されている材料(EPSとコンクリート)を構成材としているため、安価に構築することができます。

(2)効果

SSTを使用することにより、重量床衝撃音性能を1ランク(5dB;デシベル)以上の改善が可能です。これは250mm厚のSSTが330mm厚のボイドスラブの重量床衝撃音性能に相当します。

一般的なボイドスラブにおけるボイド材の設置状況

一般的なボイドスラブとTMD内蔵スラブとの断面比較(イメージ図)

今後の展開

今後、実断面模型を制作し効果を実証後、集合住宅の共用部などへの適用を進めながら、専有部(住戸居室部)に展開する予定です。

また、重量床衝撃音レベルをもう1ランク高めるスラブの開発を進める予定です。