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電気的に粘度を制御でき、低周波の振動も止められる
植物由来のMR流体の開発に成功、実用化へ

2015年1月19日UP

チキソトロピー性MR流体(経時による鉄粉の沈降を極力抑えたMR流体:鉄粉濃度85 wt%)KIT金沢工業大学・工学部電気電子工学科・花岡良一教授と株式会社かんでんエンジニアリング(大阪府大阪市)は共同で、菜種などの植物由来の絶縁油を用いるMR流体の開発に成功しました。かんでんエンジニアリングでは、実用化に向け、どのような機器への用途が具体的に可能か、関係先各社での用途開発を始め、使用機器の仕様に合わせた商品の生産を計画しています。

MR流体は、油中に6ミクロン程度の鉄粉を混合した液体で、磁界を加えることにより粘度を自在に変化できる機能性流体の一種です。電気的に液体の粘度(ねばり)を制御できるため、クラッチやブレーキ、ショックアブソーバー(ダンパ)などへの応用が期待されます。しかし、これまでは、油中の鉄粉が密度差によって沈降してしまい、これが実用化の大きな障壁となっていました。また、従来、液体には鉱油やシリコン油などが使用されていたため、自然界に漏出した場合、環境汚染を引き起こす可能性も指摘されていました。

MR流体を用いた伝達応力測定装置(MR流体の伝達応力を評価する装置:下部にMR流体を組み込んだ試験用クラッチとトルク測定用ロードセルが取り付けられている)このたび花岡教授が開発し、株式会社かんでんエンジニアリングによって生産されるMR流体は、鉱油やシリコン油などの替わりに、比較的容易に入手できる菜種油などの変性油を使用したもので、生分解性が極めて良好であるため環境に優しいのが特長です。寒冷地等の低温環境下でも使用でき、低粘度から高粘度まで幅広い制御が可能となっています。

液体中の鉄粉が沈降する問題も解決しており、作製技術は特許も取得済です(平成26年2月14日 特許第5472392号 特許権者:学校法人金沢工業大学、株式会社かんでんエンジニアリング)。

また、一般に高周波の振動はゴムやバネによって抑制できますが、低周波の振動は止めることができません。これに対し、MR流体を用いれば低周波の振動が抑制できるため、自動車のサスペンションのほか、住宅・建物の免震装置としても活用が可能です。

株式会社かんでんエンジニアリングは鉱油系絶縁油では国内シェアトップのメーカーです。このたび植物由来の絶縁油を用いたMR流体のサンプルを関係先各社に提供することで、クラッチやブレーキ、ショックアブソーバー(ダンパ)等の動力伝達装置や駆動装置のほか、サスペンション等の振動制御装置及び地震時の免震装置、振動が生じる洗濯機など家電製品への応用、スピーカーやセンサなど、具体的な用途開発をすすめ、機器にあった仕様のMR流体製造を進めていく予定です。 なお、評価頂くにあたってのサンプルは100ml程度とし、株式会社かんでんエンジニアリングからご依頼先に順次発送させていただきます。

参考:MR流体とは

磁気レオロジー流体(Magneto Rheological Fluid)は、水系もしくは油系の溶媒に、直径1〜10μm程度の強磁性微粒子(鉄粉など)を均一に分散させた懸濁液で、一般にMR流体と呼ばれます。流体に外部から直流磁界を加え、磁界強度を変化させると見かけ粘度や応力特性を任意に制御することが可能です。MR流体に外部から磁界を印加することにより、粘度が変化する現象はMR効果と呼ばれます。MR効果は溶媒の粘度が変化するわけでなく、鉄粉による鎖状クラスタが形成されることにより、流体の流動抵抗が変化するため現れます。外部からの磁界をなくし、何らかの力を加えるとクラスタは崩壊し、流動抵抗は元の値に戻ります。

MR流体を応用する利点は、単に磁界強度を変化させるだけで流体の粘度や応力が制御できる点にあります。MR流体の粘度変化は、クラッチ(粘度変化を利用した動力の伝達装置)のみならず、ブレーキ(粘性抵抗の増加を利用した制動装置)やショックアブソーバー(ダンパー:粘度変化を利用した振動制御装置)などにも利用できます。