はじめに

もしコペルニクスが地動説を説かなければ、
太陽は地球の周りを回り続けたかもしれません。
もしニュートンが万有引力を発見しなければ、
もしダーウィンが生物の進化を体系化しなければ……。
彼らは間違いなく、世界に対する認識を一変させた人類が誇る叡智です。
そして、彼らの発見を広く世に伝えた物が書物なのです。
そんな稀覯な初版本を目の当たりにする絶好のチャンス、
それが[世界を変えた書物]展です。
本展では、金沢工業大学 が所蔵するコレクション“工学の曙文庫”から
選りすぐられた稀覯書の数々を、わかりやすく展示公開します。
人類の叡智を未曾有にたたえる「知の森」を辿る旅が、
あなたにとっての刺激的な出逢いと豊かな気づきの場になれば幸いです。

本棚を見ればその人の人となりがわかると言われたのは、いつのことだったでしょう。今ではスマートホンに代表されるインターネット端末にその地位を奪われた感さえあります。しかし古くはメソポタミアの粘土板文書に端を発し、エジプトのパピルスを経て綿々と綴り続けられてきた書物の堆積知には、インターネットが逆立ちしても追いつけない凄みがあることもまた事実です。

“工学の曙文庫”というライブラリーがあります。金沢工業大学が“工学”の観点から、科学的発見、技術的発明の原典初版を収集した稀覯なライブラリーです。収蔵されているのは、グーテンベルクによって印刷技術が発明された15世紀以降の書物。古くはコペルニクスの『天球の回転について』からニュートンの『プリンキピア』、近年のものでは『スペースシャトル・チャレンジャー号の事故に関する調査委員会報告』までが収められています。このライブラリーはいわば、工学を志した全人類の叡智が静かに眠っている「知の森」なのです。

[世界を変えた書物]展、この展覧会は知の森で静かにその時を待っていた工学の叡智を、専門家のための資料という枠組みを超えて、広く一般に紹介することを目的に企画されました。専門家ではない一般の来場者が書物と出逢い、興味を抱きかつ理解しやすくするための展示の根幹を担ったのが金沢工業大学の大学院生・学部生たちです。膨大な蔵書の中から展示する書物を厳選、それらの書物同士の関係性がひと目でわかるような空間デザインを、担当教授とともに練り上げていきます。

この展覧会が、書物が湛える豊かな叡智への、出逢いと気づきのきっかけとなれば幸いです。

金沢工業大学

レギオモンタヌス(1436-1476). プトレマイオス( 90-168頃活動). アルマゲスト, ヴェネツィア, 1496年, 初版. ニコラス・コペルニクス (1473-1543). 天球の回転について, ニュールンベルク, 1543年, 初版. アイザック・ニュートン (1642-1727) . 自然哲学の数学的原理(プリンキピア), ロンドン, 1687年, 初版.