工学の曙文庫について

『工学の曙文庫』は金沢工業大学ライブラリーセンター(KIT-LC)に設置された科学的発見や技術的発明が最初に発表された初版本を体系的に収集した稀覯書コレクションで、現在2000余冊を所蔵しています。

金沢工業大学は工学の教育・研究を行っているわけですが、工学は有益で便利なものを産み出して私たちの生活を豊かにしてくれる反面、その目的や使い方を誤れば大きな災厄をもたらすことは歴史が示しています。工学の教育・研究においては常にこうした危険を認識していなければなりません。その認識のためには科学や工学の発展の歴史的展開の把握が不可欠です。『工学の曙文庫』はまさにこのために構築されたものであり、金沢工業大学の科学技術史や科学技術倫理の教育・研究に活用されています。

KIT-LCは大学に於ける学生生活の中心であるべく、すなわちまさに「大学の心臓」として機能すべく、全く新しい大学図書館のかたちを取って1982年に誕生しました。設立準備委員会には国立国会図書館副館長(当時)酒井悌氏、米国図書館振興財団顧問(当時)フォスター・モーハート氏、マサチューセッツ工科大学図書館長(当時)ジェイ・ラッカー氏ほかの方々にも加わっていただき、当時の最先端のライブラリー・サイエンスの成果が応用されたのです。例えば、KIT-LCは全ての図書館業務をコンピュータによって行った我が国最初のフル・コンピュータライズド・ライブラリー、「カードレス・ライブラリー」です。当時から「電子化情報」と称してデータベースやデジタル化された情報の収集と利用者に対する提供も行っていました。こうした新しい図書館像を模索し実践しつつも、しかし図書館の本質は「書物」にある、との思いで「書物」中の「書物」である「稀覯書」のコレクションを図書館の中心に置いているのです。

収蔵されているのは、グーテンベルグによって印刷技術が発明された15世紀以降の書物。古くはコペルニクスの『天球の回転について』からニュートンの『プリンキピア』、近年のものでは『スペースシャトル・チャレンジャー号の事故に関する調査委員会報告』までが収められています。

金沢工業大学ライブラリーセンター顧問 竺 覚暁

工学の曙文庫

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