今回は知覚を巡るもっとも本質的な問題を理解していただこうと思っています。
「実在とは何か」「実在とは実在するのか」「実在と知覚との関係は」、これは翻って「心とは何か」に繋がるわけですが、そういう問いに興味があるわけです。そしてちょっと飛躍しますが、「超越的なものはいかにして人間に現れるのか」つまり、目の前に現前する以上のものがいかに表出してくるかという問いにも言及したいと思っています。
「出来るヒトほど、自分の目で見たものしか信じない」という言い方をよくします。これはもっとも即物的で現実的な態度という意味で使われることが多いのですが、しかし例えば「目を閉じたときに目の前のものはまだそこにあるのか」と問われたときに、目で見たものしか信用しないのならば、目を閉じた瞬間に消滅するということになりかねません。それは直観に反します。ヒトは常識的に、目に見える以上の存在を信じて暮らしているのです。このような分析から、ある超越的な指向性の存在がわかるわけです。
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