ATATA-KAYAプロジェクト

環境・建築学部 建築系 建築学科担当 准教授 博士(工学)
建築アーカイヴス研究所研究員
宮下智裕

Low Carbon Life design Awardでグランプリを受賞

「ATATA-KAYA」は「アルミハウス・プロジェクト」に参加した学生の企画から生まれた発展的プロジェクトです。「アルミハウス」では省エネルギーの観点からアルミを建材に使用することを提案しましたが、発熱源としてローコストな竹チップ(山を守るために間伐した竹を小さく砕いたもの)に目をつけました。学生はこの山から生まれた自然のエネルギーとアルミを結びつけ、「山の恵みを里で活用し、最後に肥料として大地へと戻す」という循環型サイクルをデザインした新企画「ATATA-KAYA」を考案。2009年度の「Low Carbon Life design Award 2009」ではグランプリを受賞し、本プロジェクトの発足につながりました。Low Carbon Life design Award は、デザインの力で低炭素型ライフスタイルを提案していくコンペディションで、2009年のテーマは「過度な暖房に頼らず、自然と人間が集い温かさをシェアできる新しい人間空間」を提案すること。私たちが提案した、熱伝導率が高いアルミを利用することで竹チップから効率良く発熱させ、日本人に馴染みが深い蚊帳の原理を応用させたウォームアップスペースは高い評価を得ました。

学生はコンペに参加したことで、自分の学びが社会に役立ち、評価される喜びを実感すると同時に、デザイン性を加えることでエコを‘我慢するもの’から‘楽しむもの’へと変換させる貴重な体験をしました。

技術者との交流からコミュニケーション能力が向上

本プロジェクトでは学生に主体性、企画力などさまざまな面での成長が見られましたが、コミュニケーション能力もそのひとつです。社会で活躍する技術者に指示を出す時は、曖昧な表現は許されず、指示の不適切さからミスが起これば訴訟問題に発展することもあります。学生は外部の技術者と交流することでそのことを肌で感じ、小さな指示を出す場合でもイラストをつけるなど自分なりの工夫をするようになりました。「Low Carbon Life design Award 2009」の表彰式では「ATATA-KAYA」の実寸大のモックアップを制作しましたが、その際も学生は技術者に的確な指示を出し、実質10日間というタイトなスケジュールにもかかわらず無事完成にこぎつけました。

今後、プロジェクトでは他分野と垣根を越えた共同研究をしたいと思っています。例えば、バイオテクノロジーの学生と一緒に研究することで発熱をコントロールしたり、異分野の企業とコラボレーションしたり。分野を越えて知恵を結集させ、さらに研究に広がりを持たせることができればと考えています。