平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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お知らせ(平成27年度)

Design for the Community
野々市市に英語版パンフレット と英語版アプリを寄贈

2016.02.09

粟野々市市長にパンフレットを手渡す学生

  金沢工業大学学生プロジェクトチームDesign for the Community が野々市市発行のパンフレット「野々市市内医療機関一覧・マップ」「すくすく健康カレンダー」の英語版を作成した。また、今年度は金沢工業高等専門学校の学生も協働作業(Collaborative work)をし、外国人向け医療施設サポートアプリ「ホスピタルインターフェイス」を開発した。作成した2種類のパンフレットは、それぞれ300部ずつ印刷し、アプリと共に2月9日(火)に野々市市役所で行われた受贈式で粟貴章野々市市長に寄贈した。

 プロジェクトでは、デザイン思考の方法を用い、野々市市在住外国人を対象に、市が市民向けに提供しているサービスに対するニーズ調査を実施し、市の取り組みとニーズの間のギャップを探り、問題発見および解決方法を検討した。

 情報を収集し、インタビューも実施

  本プロジェクトで用いたデザイン思考では、どこに問題があるのかその原因を探るリサーチから始める。インタビューによる聞き取りを行ったり、住民生活を観察し、住民の立場から問題点を探り出すことで、真のニーズが抽出できる。リサーチで得た情報を分析し、掘り下げることで生活者が普段気づいていない本当の課題を割り出す。それらの課題を定義し、プロトタイプを作成、解決策を具体化していく。このプロセスを何度も繰り返し試行したのち、最終の解決策に到達する。


保険センターでアプリの試行をする学生たち

 リサーチでは、まず野々市市が提供している情報にどのようなものがあるのかを市民の立場に立って視察した。野々市市役所をはじめ、市の図書館や保健センターなどの公共施設を訪ね、パンフレットなどの配布物や掲示物を集め情報を収集した。集めた情報は一つずつ付箋紙に書き込み、整理した。整理された情報をもとに、インタビューで質問する事項をカテゴリー分けした。その後、野々市市在住もしくは通勤・通学している外国人24人にインタビューを実施した。一口に外国人といっても職業や国籍、年齢もバラバラであるが、インタビューでは、共通して生活上でどんな困難点がありどのような情報を必要としているかを聞き取った。観察とインタビューで得た情報をもとに、野々市市役所と保健センター、医療施設の職員に市から提供されるサービスについてわからない点を質問し、明らかにしていった。

 インタビューにより、集まった情報も付箋紙に一つひとつ書き込んで整理し、市の提供している情報にそってカテゴリー別に分け、共感マップ(Affinity Map)を作成した。共感マップは、集めた情報ではなく、参加学生がインタビューや観察で得た所見や考えを他のメンバーと共有するために作成した。カテゴリー分けした情報をもとに、在住外国人がどのくらい市から提供されているサービスを知っていて、使用しているかを分析し、埋めるべきギャップ(課題)を抽出した。これらで得た問題点をもとに課題定義を行った結果、以下の問題が見つかった。一つは、医療施設の所在地情報が欠けているということと英語を話せる医師や、女性医師がいる施設情報が欲しいというニーズに対応できていないという問題である。野々市市内にある医療施設リストと地図は市のホームページからダウンロードできるが、日本語版のみで、日本語のわからない住民へは情報が届いていない。二つ目は、医療施設で自分や家族の症状を正確に、かつ詳細に伝えることが難しいという課題である。更に、保健センターの方々への聞き取り調査により、妊婦・幼児用の健康診断のパンフレットは日本語版しかないため、保健センターでの対応に困っているという課題が見つかった。医療関係以外では、ゴミの分別方法の複雑さを嘆く声があげられる。

  野々市市では既に英語版パンフレットが作成してあるが、それでも日本のゴミの分別方法は、他国より細かく分けられていることから、難しいという課題があった。

  プロトタイプの作成では「医療パンフレットグループ」「医療アプリグループ」「ゴミ分別アプリグループ」の3グループに分かれ作業を行った。「医療パンフレットグループ」は、野々市市が作成した「市内医療機関一覧・マップ」と「すくすく健康カレンダー」という妊婦と乳幼児の為の健康診査や予防接種の情報をまとめたパンフレットの英語版を作成した。調査での英語を話せる医師や女性医師がいる施設情報が欲しいというニーズに応えるため市の医療機関一つひとつに問い合わせて調査したが、医師の治療分野などの細かい情報を網羅するのは困難を極めた。よって「市内医療機関一覧・マップ」に他言語に対応している医療機関の情報を公開している、石川県国際交流協会のウェブアドレスを掲載することや、女性医師の情報は保健センターへ直接問い合わせてもらえるように、問い合わせ先情報を記載することに決定した。

  「医療アプリグループ」は、医療施設の訪問・利用を最初から最後までトータルサポートできるスマートフォン用アプリを開発した。アプリのQRコードは「市内医療機関一覧・マップ」英語版に掲載し、誰でも無料で使用可能にした。

 平成26年度に金沢工業大学の学生グループが英語版のゴミ分別冊子を作成したが「ゴミ分別アプリグループ」は、更に在住外国人にとっての利便性を高めるため、ゴミ分別アプリ「5374.jp」の英語版を作成した。「5374.jp」は、一般社団法人コード・フォー・カナザワが市民のために作成したもので、野々市市対応の日本語版は既に公開されている。その制作に携わった方々と何度も話し合いをし、協働作業(Collaborative work)という形で進めた。「5374.jp」の英語版の作成過程において、ゴミの分別方法に関する情報のオープンデータ化を推進してほしいという要望も生まれ、市に提言することができた。

プロジェクトの成果


英語のパンフレットなどを手に粟野々市市長と
記念写真に納まる Design for the Community
メンバーたち

 デザイン思考を用いた、在住外国人への聞き取りや生活環境の観察を通じて包括的なニーズ調査ができた。また、市役所と保健センター、 医療施設の職員への聞き取り調査をすることで、サービスの発信者側からの視点を分析に取り入れることができた。今回取り組んだ「市内医療機関一覧・マップ」と「すくすく健康カレンダー」の英語版パンフレットはそれぞれ300部ずつ印刷し外国人向け医療施設サポートアプリ「ホスピタルインターフェイス」とともに、2月9日(火)に野々市市役所で行われた受贈式で粟貴章野々市市長に寄贈した。これら英語版冊子は、受贈式の翌日より野々市市役所の窓口となる市民課と健康推進課に設置され、要望のある住民に配布されている。また、石川県立図書館からも問い合わせがあり、図書館での閲覧も可能である。

〔プロジェクトメンバー〕
・金沢工業大学
栁町 卓実(電気電子工学科4年)
島﨑 樹 (航空システム工学科3年)
大家 颯馬(電気電子工学科3年)
池端悠一郎(電気電子工学科3年)
北口 知樹(情報工学科3年)
西部 光平(ロボティクス学科2年)
堀  純菜(ロボティクス学科2年)
中村理紗子(心理情報学科2年)
・金沢工業高等専門学校
菊田 星 (グローバル情報工学科5年)
能美 龍星(グローバル情報工学科5年)
〔指導教員(英語教育課程)〕
・金沢工業大学/藤井清美(工大指導責任者)
ブレント・ライト/ステファニー・レイノルズ
・金沢工業高等専門学校/松下臣仁(高専指導責任者)
ロバート・ソンガー

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