平成26年9月20日~22日にかけて、アントレプレナーズラボにおいてKITハッカソン2014が開催された。ハッカソンとは「Hacking」と「Marathon」を組み合せたプログラミング主体のイベントで、ソフトウェア開発分野のプログラマ等が一同に参画し、短時間で集中的に使用に耐えるソフトウェアの開発や既存のソフトウェアの改善等に取り組むものである。KITハッカソン2014は、情報工学科の中沢実教授を中心に、ICT・RTを研究領域とする教職員の有志によって発足し、産学連携による教育研究のさらなる特色化推進を目指している。参画教職員は以下の通り。
情報工学科 :中沢実教授、中野淳教授、河並崇講師
ロボティクス学科:小暮潔教授、竹井義法准教授
基礎実技教育課程:西川幸延教授、相良純一講師
近年首都圏を中心に多くのハッカソンが開催されるようになっており、その開催目的については、プログラミングスキルの向上、メーカーが提供するプロダクトのPR、自由にモノづくりに取り組みたいコミュニティによる開催等様々なである。
こういった中において、本学では、ICT・RTを学ぶ学生に対し、魅力的で実践的な学習環境を提供すると同時に、社会人を含めたICT分野に携わる人材の成長支援と社会から必要とされる実質的な産学連携を創出することを目的にKITハッカソン2014を開催した。
休日を含む日程の中で、機械系、情報系から30名の学生が参画し、企業からは12名(7社)の方が参画。全12チーム(学生チーム⇒9 学生×社会人チーム⇒1 教員チーム1 社会人チーム1)によって開催された。
今回のハッカソンでは、「地方都市イノベーション創出 ~消滅する地方都市を救え!~」をテーマに、国内最大の不動産物件紹介サイトを運営する株式会社ネクストや、最先端の会話型ロボットパルロを提供する富士ソフト株式会社、地元企業から、株式会社PFU、株式会社アイ・オー・データ機器、株式会社チェンジビジョンから、プロダクトやAPI(プログラミングの際に使用できる命令や規約、関数等の集合)を提供していただき、テーマに基づいたアイディア創出とそれらを実現するプログラミングが繰り広げられた。
高齢化が進む地方都市における犯罪防止を視野に、自宅の鍵の施錠をスマートフォンで確認することができるシステムの開発や、地方都市に存在する空家問題等を背景に限界集落に対するスムーズな集団移転をアシストするシステムの開発等、ユニークなアイディアに基づいたシステム開発が繰り広げられ、最終日には、それぞれが開発したシステムのプレゼンテーションが行われた。
審査員として参画いただいた日本ベンチャーキャピタル(株)投資部門 ベンチャーキャピタリスト米澤 剛 様からは、この短時間でそれぞれのアイディアをシステムとして実装するスキルの高さに対し高く評価をいただくと同時に、市場や顧客ターゲットを明確にし、それぞれに対してどのような付加価値を提供するのかをより明確することで、提供するシステムの価値がさらに高まるとアドバイスをいただいた。
最優秀賞には、新幹線開業を控えた金沢市の世界の交流拠点を目指してというビジョンを踏まえ、グローバル化に対応した観光案内のシステムを開発した、機械工学専攻の学生3名で構成される「The.M」が選ばれた。「The.M」は、富士ソフトが提供するコミュニケーションロボット「パルロ」をハッキングし、パルロからの問いかけに答えると様々な観光名所の詳細を解説するシステムを開発し、審査員からシステムの完成度の高さ、魅力的なプレゼンテーション等が高く評価された。
今回のKITハッカソン2014を通じて、学生に対して、現在修得しているスキルを社会の場で試すことが可能となる魅力的な学習機会が構築できた。また、情報を提供していただいた企業への理解が深まるなど、キャリア教育の観点からも成果があったと実感している。
また、学生の斬新なアイディアにより、普段ビジネス上の接点がない企業同士のプロダクトが連動するソリューションが創出されるなど、イノベーションに向けた企業同士のアライアンスについても可能性を感じることができた。
今後も、KITハッカソンを継続的に開催し、地域発イノベーションに向けた人材育成拠点づくりを目指して教職員一丸となって取り組んでいく。