平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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お知らせ(平成26年度)

KITサイエンスシティプロジェクト 大学COC事業
本学学生 地域高校生 高校教員対象に公開講演会

2014.04.26

多目的ホールに700人が参加


実験を交えた講義に興味深く聞き入る参加者=多目的ホールで

 KITサイエンスシティプロジェクトは本学の「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」の一環として、4月26日(土)、本学の学生と地域の高校生、高校教員を対象に多目的ホールでサイエンスリテラシー講演会、23号館415室で物理実験セミナーを開講した。


第1部 サイエンスリテラシー講演会

(1)「科学リテラシーと科学コミュニケーション(科学教育の課題と展望)」

 第1部の講演会は本学「基礎物理」と「理科教育法」の履修生、地域の高校生約700人が出席し、まず東京理科大学の北原和夫教授の話に耳を傾けた。北原教授から「科学(サイエンス)には、その語源を辿れば、知識を得ることと、それを公開・共有するという意味があり、いわば科学は公共財である。21世紀の課題は、科学リテラシーとしての専門的な考え方に基づいて、いろいろな分野の人々が科学に立脚したコミュニケーションを通じて、協働する社会を作り出すことだ」と講演いただいた。日頃このような視点からの講演に馴染みが少ない学生や生徒にとって、これから技術者、研究者を目指すときの哲学(基本的な考え方)、心構えを教えていただく貴重な体験となった。

(2)「物理実験と実験レポート作成のポイント」

同席している学生同士でデータ解析をする参加学生たち

 続いて「台ばかりで大気圧を測れるか?」をテーマに、東京大学の長谷川修司教授から、実験の概要とレポートの作成のポイントを説明いただいた上で、本学の学生と高校生がそれぞれ2人1組となり、シリンダーの内径を測定し、実験シートに従って実験及び解析を進めた。壇上で台ばかりを使って大気圧測定のための演示実験を行い、その結果にもとづいて計算、グラフ作成、及び測定値の誤差評価等を行った。物理実験にもとづくレポート作成の基礎についても理解を深めた。
 参加した学生たちは、ノギスによる内径測定や、単位換算の手続きを経ながらのデータ解析など、同席した学生同士で相談しながら、時間を忘れて取り組んでいた。多目的ホールを埋め尽くす本学の学生と高校生がそれぞれ真剣に実験や得られたデータ解析に取り組んでいる様子は、まさに圧巻であった。この体験が、これから専門での実験などに活かされることを期待したい。

第2部 物理実験セミナー

(1)「物理学との出会い」

 「物理チャレンジ」で金メダルを獲得した経験のある京都大学院生の尾崎順一君を招いて、自分が物理学を学ぶようになった経緯とその原点を、自らの高校生時代を振り返りながら、先輩として語った。最初、尾崎君は化学に興味があったが、次第に数学や物理に惹かれていったこと、物理学の醍醐味、物理学を学ぶ素晴しさ、自分のこれからの目標などは、聴衆である本学学生やSSH高校生をとてもわくわくさせる内容であった。彼ら彼女らの今後の進路を考える上で、とても参考になる講演内容であった。

(2)「LEDを用いたプランク定数の測定」

「LEDを用いたプランク定数の測定」の実験で
光のエネルギーを求める参加者

 「国際物理オリンピック」の予選である「物理チャレンジ」の過去の実験課題「LEDを用いたプランク定数測定」の実験セミナーを行った。長谷川教授からは、物理チャレンジで高校生から提出されたレポートの実例が紹介され、優れたレポートはどこがどのようにいいかを解説していただいた。東北大学の近藤泰洋元・教授からは、今回の実験課題の背景についての理論的な解説があり、実験実習の進度に合わせて指導頂いた。本学の「理科教育法Ⅰ」履修学生18人、SSH高校生30人が、近藤元・教授の指示に従い、3、4人からなる班で実験実習を行った。

 実験実習では、まずブレッドボード上でLEDを点灯させる回路を製作し、赤、緑、青、紫色のLEDについてそれぞれの発光開始電圧を測定して光のエネルギーを求めた。次に回折格子による回折現象を利用して、それぞれの色の光の波長と振動数を測定し、得られたデータからエネルギー対振動数のグラフを描き、直線フィットしてその傾きからプランク定数を求めた。その際、データのばらつきを考慮して誤差を見積もる方法も学んだ。全15班が、各班で得られたプランク定数の測定値を発表した。
 高校生と引率高校教員、本学「理科教育法Ⅰ」履修学生は、具体的な実験実習を通して、実験レポートの書き方やデータ解析にも興味をもち積極的に参加していた。
 プランク定数や光の回折現象は、高校1、2年生は未習で、難解な点も含まれていたが、同セミナーに参加いただいた先生方の協力もあり、参加者全員、一所懸命に課題に取り組み、いずれの班も予想外にいい測定結果を出していた。参加した学生、高校生にとって、科学への好奇心を駆り立てる、刺激的で貴重な実験セミナーであった。そして、第1部サイエンスリテラシー講演会で北原教授の講話にあった「人類は得られた知見を互いに共有することで進化することができた」ことを、参加者が自ら実感することのできるセミナーであった。
 今後も、本学の学生と地域の高校生とがサイエンスに触れ、共に学ぶことで、大学生には学生としての学びのイノベーションを、高校生には科学を学ぶきっかけを提供できる学びの深化につながるイベントを実施していきたいと考えている。

プログラム

第1部/サイエンスリテラシー講演会(多目的ホール)
司会進行:中村晃 教授(金沢工業大学)

【1限】対象:金沢工業大学「基礎物理」履修学生
8:40~ 9:10 「科学リテラシーと科学コミュニケーション(科学教育の課題と展望)」
 北原和夫 教授(東京理科大学)
9:10~10:10 「物理実験と実験レポート作成のポイント」
~ノギス、汎用注射筒を使用した大気圧の測定~
 長谷川修司 教授(東京大学)
 田中忠芳 准教授(金沢工業大学)
10:10~10:30 ( 休憩 )
 
【2限】対象:金沢工業大学「基礎物理」「理科教育法Ⅰ」履修学生、地域の高校生と高校教員
10:30~11:00 「科学リテラシーと科学コミュニケーション(科学教育の課題と展望)」
 北原和夫 教授(東京理科大学)
11:00~12:00 「物理実験と実験レポート作成のポイント」
~ノギス、汎用注射筒を使用した大気圧の測定~
 長谷川修司 教授(東京大学)
 田中忠芳 准教授(金沢工業大学)
12:00~13:00 昼食
 
第2部/物理実験セミナー (23号館4階(23・415室))
司会進行:田中忠芳 准教授(金沢工業大学)
13:00~13:30 「物理学との出会い」
 尾崎順一 君 (京都大学大学院博士課程3年)
13:30~15:30 「LEDを用いたプランク定数の測定」
 長谷川修司 教授(東京大学)
 近藤泰洋 元・教授(東北大学)
15:30~16:00 実験器具の後片付け、アンケート・感想記入
閉会のあいさつ
 青木克比古 数理工教育研究センター所長(金沢工業大学)

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