平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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KITトピックス/活動報告(平成28年度)

こどもの成長を見守る「おもちゃ」開発プロジェクト 工学部 情報工学科 准教授 河並 崇
幼稚園と大学のそれぞれに目的を設定

こんにちは。情報工学科の河並と申します。こどもの成長を見守る「おもちゃ」開発プロジェクトについてご紹介させていただきます。私のほか、心理情報学科の渡邊 伸行、メディア情報学科の江村 伯夫、産学連携部からは竹内、中山が参加しております。
このプロジェクトの目的には、幼稚園を対象とした目的と大学を対象とした目的の2つがございます。なぜ幼稚園なのかについてですが、幼稚園=地域社会ということで地域志向教育研究プロジェクトの趣旨にふさわしいのではないかと考えたからです。


まず幼稚園における目的は、

  • 「自発的に動くこどもを育てる」という園の教育方針を実現する
  • 保護者へ安心を届ける
  • 幼稚園の先生の業務を減らす

以上の3つです。対して大学での目的は、

  • 地域社会の具体的ニーズに基づく実践的な開発体験
  • 学科・専門を超えた学生間のコラボレーションを図る →情報工学、ロボティクス、メディア情報、心理情報の学生がいろんなチームに分かれて参加
  • 新たな研究テーマの発見につなげる

となっており、実施体制は次の通りです。

KIT-COC事業の概要

学科を超えたコラボレーションで展開

先に、今回のプロジェクトの対象となった済美幼稚園について少し紹介したいと思います。
済美幼稚園は金沢市にある私立の幼稚園で、「ヨコミネ式」という教育方針を導入しています。ヨコミネ式は横峯吉文氏が提唱する教育方針で「自ら学ぼうとする力」に注力した教育法です。たとえば園児に小学生1年生の漢字や、足し算、引き算、掛け算までを教えたりします。また、逆立ち歩き、ブリッジ歩きを実施するなど、運動にも力を入れております。
プロジェクトでは、この幼稚園を対象に、園児、先生、保護者のニーズを解決できるおもちゃの開発に取り組みました。実際の開発体制については、4学科がコラボレーションし、約40名の学生が参加しています。

KIT-COC事業の概要

学科のくくりで縛るつもりはありませんが、それぞれの得意分野を活かす体制になっております。情報工学科・ロボティクス学科はものをつくるのが得意な学生が多いのでハードウェアの開発やセンサーネットワークの構成などを熱心に担当しました。
また心理情報学科の学生は園児の行動を分析しました。行動分析は幼稚園からのニーズにもとづいて行われたものです。さらに、制作物に対し、ユーザーインターフェイスのデザインであるか、こちらが意図したとおり正しく使われているのかを分析しました。そうすることでつくって終わりではなく、今後よりよいものに改良するための材料にできるよう、心理の観点から評価を行いました。
メディア情報学科では、キャラクターやデザイン、効果音について得意な学生が多いので、そういったところの開発を担当しました。

幼稚園のニーズを満たすおもちゃが誕生

今年度の目標ですが、済美幼稚園からは次の4つの要望に対しておもちゃを開発し、解決案を提示してほしいというテーマをいただきました。それが、

  1. 絶対音感を鍛えさせたい
  2. 言葉を効率的に覚えさせたい
    昔から小さい子どもに使われていますが、フラッシュカードといって、カードを見せて子どもに言葉を覚えさる手法があります。今回は、それに代わるより効率的なものがあれば提案してほしいという意見をいただきました。
  3. 指使いを起用にさせたい
    特に男の子に多いパターンとして、右手と左手がよくかみ合わない、ボタンがちゃんと止められないということがあるそうで、それを解決できるおもちゃをつくってほしいとオーダーがありました。
  4. 幼児の謎行動を分析したい
    たとえば、園児は必ず決まったトイレに入るとか、特定の時間にいなくなるなど、先生たちにも理由がわかならい謎の行動をするそうです。そういった謎の行動を分析してほしいと言われました。

以上の4つです。この目標に対して、40名の学生が6つのチームに分かれて取り組み、既にたくさんのおもちゃをつくっております。
こちらがその成果物になります。
最近はものづくりが非常に簡単にできるようになってきております。IoTの活用やセンサーが安価で購入できたり、ネットワークシステムも容易に構築できるようになりました。ですから、学生たちもこれらのおもちゃを比較的簡単につくることができる時代になってきました。

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実際の動画もご覧ください。この装置はテストにも使えますし、おもちゃとしても使用できます。先生からは、音感が備わっているかどうか判断しやすいとか、もっと難しい問題をつくってほしいなどの感想をいただきました。

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こちらは風船を手でつかんで音を出すというものです。ふうせんの圧力を変えることで音が出ます。音だけでなく指の使い方も練習できるということで好評でした。

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「てんぽりら」はフラッシュカードをコンピュータで制御するおもちゃで、すでに漢字が使われています。リズムに合わせて言葉を出しますが、実際に試してみると予想以上に園児がクリアでき、先生からはもっと早いテンポやおもしろいテンポで制作したほうがいいのではないかというアドバイスがありました。

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こちらも言葉を覚える絵本アプリです。絵本の後に設けたクイズが子どもたちに好評で、先生からは日ごろ単純に読み聞かせをしても理解しているかどうか判断できなかったが、これだと個人単位で確認ができて非常にいいというコメントがありました。
ほとんどの園児の保護者がスマートフォンやタブレットを使っているので、子どもたちもスムーズに使えるのではないかという話もありました。

行動分析についてはまだ結果は出ておりません。現在、行動分析を行うためのデバイスの開発を行っております。現状はFRISK(フリスク)サイズといわれるもので、まだかなり大きいです。それに無線の発信機をつけておけばその子がどこで遊んでいたかなどのソーシャルグラフや誰と遊んでいたかの関係図を後で見ることができます。
済美幼稚園はとても運動が活発な園ですから、デバイスによってその日の運動量も記録できるシステムも制作しております。それについては4年生が今年の3月に発表予定です。

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行動分析においては「UX評価」についてもすすめています。UX評価とは、ユーザ体験=UX(ユーザエクスペリエンス)を鑑みた評価のことで、プロジェクト内で他のグループのおもちゃを評価します。その結果を活用し、子ども、先生、保護者にとって安全で「何度も使いたい」と思えるものづくりを目指します。
こちらは1月31日に済美幼稚園において行われた報告会の様子です。もっと機能を増やしてほしいとか、すぐにも使いたいといった意見が出ました。

学生からのコメントとしては、

  • 子どもが対象なので、安全性についてはよく議論したつもりであったが、幼稚園の先生から見ると、配慮の足りない点がいくつも見つかった
  • 立場や専門の知識が違えば、見えてくるものが大きく変わることに気づくことができた
  • 自分の学科では学ばない技術などを身に付けることで自分の視野を広くできた

などの声がありました。特に安全性に関しては、まだまだ配慮が足りない、改善の余地が見つかったという声が多く寄せられました。

最後に成果をまとめてご報告します。
先ほど述べた済美幼稚園への報告会、学生の気づき、UX評価の実施以外に、金沢市内の幼稚園からの実際のニーズを基に4種類のおもちゃ・教材を開発しました。
また今後は特に幼稚園にこだわることなく、高齢者の介護施設への活用も視野に入れてプロジェクトを継続したいと考えております。
報告は以上です。ありがとうございました。

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