平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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KITトピックス/活動報告(平成28年度)

基調講演 データドリブンによるスマート社会の実現 株式会社NTTドコモ 法人ビジネス本部 IoTビジネス部 伊勢田良一様
少子高齢化を迎える日本

皆さんこんにちは。ただいまご紹介にあずかりましたNTTドコモIoTビジネス部の伊勢田と申します。冒頭にまず、このような機会を賜りました金沢工業大学様に深く御礼申し上げます。ありがとうございます。では早速講演に入らせていただきます。

昨年自民党のIT戦略特命委員会が有識者を集め、これからの日本、少々閉塞感がある日本に関してのさまざまな意見を求めました。その際Google(X)の統括責任者であるアストロ・テラー氏を招き「Googleはどういう会社なのか」と問いました。その時の氏の答えが「許可を求めるより、やって謝る方が良い」というものでした。これはGoogleの社風ですね。Fail first、fail cheap、fail smartということで、周りではよくアジャイル開発と言いますけども、考えているならやってみようじゃないか、こういったチャレンジ精神あるいはスピード感が今の日本にはないのでは、と述べられたそうです。
では本当に日本にスピード感がないのかと言えば、皆さんもご存じの本田宗一郎さんがいらっしゃいます。本田さんはこう言いました。「やってもせんに!とべ!」と。
我々もよく「遅い」と言われます。皆さん考えて考えて、石橋を叩くように考えて、その頃には石橋を割っちゃって渡れなくなってる、そういう状態が多いのではないでしょうか。実は戦後復興の時期には本田宗一郎さん、ソニーの井深大さん、松下幸之助さん、土光敏夫さんらがどんどんチャレンジし、日本をスピード開発していた時代がありました。
先達の方々にうかがうと「手続きより手を動かせ」と言われます。あるいは「朝買った鉛筆が夕方にはなくなるくらい書きまくれ」というようなことを聞いた記憶がございます。

こちらは国による少子高齢化の図です。2048年、平成60年には日本は1億人を割ると言われています。さらに2060年には、生産人口が約半分、さらにこの頃になりますと65歳以上の方が2.5人に1人という時代を迎えると言われております。こういった人口減少、少子高齢化への不安から、新たな経済成長を生み出す取組が不可欠だと思われます。産めや増やせや、生産人口増えるぞ、とにかく頑張ればいいという時代から、減っていく中でどうやって進めていけばいいのかを考える時代へと変化しつつあるということです。

石川県も同様に人口は減少すると予想されます。2040年、平成52年には100万人を割り、約36%の方が老人になっている。ただ65歳以上を老人と呼んでいいのかは疑問です。1億総活躍と言われますので、おそらくこの頃には「65歳はまだ現役」になっているのではいかと。今は一応65歳以上の人口が30%超えますよ、高齢化社を迎えますよ、と言われています。 世間では「自助、共助、公助で社会を支え合っていこう」と言われておりますが、そもそも高齢化になると自助できる力がない、共助といっても近隣の皆さんがいなくなってしまう、公助はそもそも人口減で税収が少なくなってくるので皆さんのご要望に応えられなくなってくる。もう、ないないづくしになってしまいます。このように助け合いを基本としてきたつながりの維持が難しい時代を迎えようとしているのです。

IoTの先進的な事例

そういったものを補ってゆくためにどうすればいいか。そこでIoTだったりAIだったりビッグデータが出てきます。皆さんIoTの図はよくご覧になっていると思いますが、注目いただきたいのは「測・電・通・雲」の四文字です。

「測」はセンシングです。トリリオン・センター時代を迎えるということで、センサーが非常に低価格、低消費レベルになってきています。そして爆発的に普及しております。あと簡単なものとしてはスマートフォンの普及があり、スマートフォンそのものが人が能動的に情報を発するセンサーになってきてます。
次は「電」です。ここは給電・発電・蓄電、こういったことですね。こういった技術を、例えば再生可能エネルギーの蓄電池の発達とか、デマンドレスポンスなど、需要がある省エネにどうやって生かすのかという課題があります。さらに最近は、地域、バーチャルパワープラントのようなものをつくって電力を自ら守っていく、地域が地域の電力供給をしていくといった発想も出てきているようです。

次は「通」と書いてある通信の部分になります。私たちの通信がかかわると当然通信コストがかかります。ですからゲートウェイまではこういった新しい通信技術で、bluetoothとかZigBeeなどがあるのですが、意外と距離が稼げないという問題があります。これまではWi-Fiだけできておりますが、5Gの時代を見据えれば、LPWA(Low Power Wide Area)に取り組んでいかなくてはなりません。 LPWAを具体的に申しますと、Wi-SUNであったり、総務省で規定しておりますWi-SUN、あるいはSIGFOX、LoRaなどという規格が出てきております。現況は3Gあるいは4Gなんですが、私たちは2020年を目途に5Gのサービスを首都圏から開始する計画です。

最後が「雲」。クラウドでございます。最近さまざまなクラウドサービスが出てきております。IBMのBluemixであったり、マイクロソフトのAzure、特に海外勢が非常に強くなってきています。国内のNEC、富士通、日立、NTTデータ、そしてドコモもいろいろクラウドのサービス、IoTプラットフォームを総じてつくっているんですが、日本の企業はどうしても戦艦大和をつくりたがるんです。それで、考えて考えて戦艦大和ができた頃には技術的に古くなっていたり、あるいは戦艦大和ゆえに狭いところになかなか入っていけないという事態になりがちです。
その点海外のプラットフォームは非常に柔軟性があり、エコシステムなどもできておりますよね。今回、金沢工業大学様もBluemixを使われるようになったと聞き及んでおりますが非常に先進的ないい取組だと感じております。

IoTのプラットフォームが社会的な課題を担う、製造分野から防災分野、あるいは観光、さまざまな分野をキャッチアップし、分析し、社会に実装していくこと、こういったものがCPS(サイバーフィジカルシステム)中間モデルとなっております。

ではデータの入口なんですけども、プラットフォームがあって何かモノをつくる、あるいはモノから一気通貫の場合もあります。海外の事例と一部日本の事例をご紹介いたします。
左上にあるのがNest(ネスト)、これは有名ですからご覧になったことやご存知かもしれません。アメリカの家というのは、ほぼセントラルヒーティングですから集中型です。こういったサーモスタットが主流です。もともとはトニー・ファデルさんという方が作ったサーモスタットです。このNEST社というのは、いろいろな環境データを計測し、それをクラウドに上げていくサービスです。Googleが32億ドルで買収したことはよく知られています。Googleは賢いから、各家庭にこういったセンサーが入っていると、たとえばこれを使ってクライスラーやGM、あるいはハウスメーカー、ヘルスケアの会社と組む。人に近いところに使えるということで思い切って買収したと聞いております。

それから次の緑色が最近日本にも入ってきている「アマゾンダッシュ」というボタンです。ボタン一つ押せばタオルが届くという。そのうちドローンで配れる時代が来るとされているんですが、こういったものがどんどん家庭に入ってきている。アマゾンとしても、ビッグデータを利活用するために、あるいはボタン一つで誰がいつこの石鹸を買ったのかというようなことまで分かるようにデータを蓄積するためならデバイスをばらまいても安いものだというところで普及してきたのです。

右側はスマートメーターです。これは日本です。東日本大震災以降スマートメーターを普及しようということで、ドコモも東京電力と一緒に取り組んでいます。当時のGEは、まだスマートメーターを売却する前なんですが、かなり外圧があったと聞いております。このスマートメーター、日本の場合は規格があって東芝系だとか、三菱系をつくっています。それに対してGEのスマートメーターは丸いんです。それだけでまずダメだというところがありました。変電器に関しても、当時の日本の政府を含め、変電器を海外から持ってくるという非常事態だったんですが、復興で間に合わないのでやってきてもらって付けてみたら使えたというようなことがありました。
このようにスマートメーターの規格に縛られることもありますが、重要なのは安全との相関関係であり、現在、東京電力管内では1000万個付ける予定でおります。当初の通信、先ほどのIoT図のなかで、通信のところでまだ確立していない、常に安定していないものですから。現状は、ドコモの回線を使っていただいていることもございますが、順次、先ほどのLPWA、あるいはWi-SUNというものを使うと聞いております。

それから左下でございます。これは中には腕に巻いてる方もいらっしゃるかもしれません。ヘルスケア、バイタルデータですね、ドコモのサービス、あるいは他社でもやっています。
下の真ん中はテスラ。テスラはGMがトヨタの牙城を崩そうとしており、面白いモデルになっています。例えば、ハリウッドでテスラの車を運転していて事故を起こしました。ぶつけたと同時にテスラにどこがぶつかりました、この部品が必要ですという情報がクラウド上から中国福建省にある工場に発注されると聞いております。それと同時に、いつ納品され、いつ修理工場に入るかというデータが保険会社にも入る仕組みになっているようです。
トランプ政権下で今後どう動くのかわかりませんが、こういったデータを活用したサービスが出てきています。通常は事故を起こすとまずディーラーに電話して「ぶつけちゃったんだけど」「じゃあちょっと持ってきてください」「部品がいつ入りますか、いつ修理できますか」と電話もしくはFAXでやりとりしていたものが、全てのデータがIoTの技術を使って一気通貫でなされる時代がもうすでに来ているということです。日本のテスラでも同じことが起こりつつあります。
最後に写真下にあるアルミ缶です。これはフランスにあるNetatmo(ネタトモ)社という会社です。こちらは大きい方が屋内用、小さい方が屋外用のウェザーステーションになっております。アマゾンでも約2万円で購入できます。スマートフォンで見ると上の水色のところが屋外用で、温度、湿度、気圧などが分かります。下が屋内で、空気の状態、CO2レベルが分かります。
今回講演会の資料を用意したのは1週間以上前でしたが、金沢市を見ければ、これらのデータがオープンになります。さすがに屋内のデータは個人情報に触れますのでオープンにしていません。
私がこれを設置している鎌倉で他の人とシェアリングし、お互い共有しようとアドミッションをつけておくと鎌倉の情報が見られる。海外から金沢に来られる方、東京から新幹線で明日金沢行くけど天気が心配な場合も確認できます。これをウェザーステーションと呼んでるんですが、私はこのように使っています。二世帯住宅の一階の両親の部屋にもついており、母親と父親の様子を確かめられます。CO2レベルが上がってきたとか、ストーブを付けたかなとか、そういうことが分かります。なんだか朝から全然温度が上がらないぞ、ということで母親に電話すると、うちの母親は関西出身なためか「あんたうるさいな」と怒られたりします。簡易的な見守りシステムとしても利用できるということですね。
すごいのは、先ほど見ていただいたベースステーションがアマゾンで2万円で買えるんですがクラウド利用料が無料なんです。それだけで使える気がしますよね。しかもAPIも結構開放してますので、設置さえすればどんどん使っていけますよという例だと思います。

Netatmo社という会社はフランスにありますが、Googleで検索すると、データが全部アメリカに行くのと同じように、フランスに行ってます。この会社も昨年なんとこれだけで3000万ユーロを調達しています。開発をしたメンバーにはフランスの工学系の大学の先生もいたということで、私としては、この地域の課題をうまく吸い上げて、金沢の地から金沢工業大学様も含めて第二のNest、外部のNetatmoが出てくることを期待しています。

ビッグデータによる第3次AIブーム到来

次はAIについてです。最近書店に行くと「IoT」という本がかなり減り、AIばかりです。私も50代半ばになっているんですが、AIという言葉はどこかで聞いたことがあると感じていました。1956年にはすでに人工知能という言葉が定義されたと聞いておりますが、私としては1980年代にきた第2次AIブーム、人工知能ブームを思い出します。当時はデータマイニングという言葉が普通だったと記憶しています。
IBMに買収されたSPSSという会社がございまして、データをうまくマイニングすると結果が分かることが第2次のブームになっていました。
ここにきて第3次AIブームといわれているのは、私からすると新しい動きではないと思っています。ただし、当時はデータをストレージする費用が高額でした。さらにデータをとる手段、センサーも高かった。さらに通信手段も高い。すべてが高く、さらに言うと、コンピュータの処理能力も小さかった。これは知の力もあったんですけど、周りの外的要因だったんですね。それでなかなか今のAIブームのようにいかなかったのではと考えております。センサー、SNSのデータ、オープンデータが普及していくと、分析しやすく、これまでは限られたデータで母集団を推定するということが多かったと感じます。これからはどんどんセンサーが普及するのと、さまざまなデータが来る、今の状態ですね、データのいい悪いは別にして、全てのデータをとりあえずとってみようじゃないか、という傾向です。
ビッグデータの定義なんですが、リアルタイム、さまざまな形式で大量に生まれるデータを指すことが多いようです。まだきちんと整理がついておりませんので、アナログデータであったり、機械可読データであったり、画像データ、音声データ、そういったものが大量にありますが、これをどうやって整理するのかが今後の課題かと思います。

オープンデータの使い方として、面白いサイトがございましたので、ご紹介させていただきます。
これは政府のオープンガバメント戦略というのをベースに、オープン・ナレッジ・ファウンデーションというところが公開しているサイトでございます。私が鎌倉に住んでいることは先ほど述べさせていただきましたが、ここに自分のデータを入れてみました。だいたい年間、鎌倉市に対して34万200円税金を納める計算です。そうすると、だいたいどこにいくら使っているのか、一日当たりどれくらい使っているのかが分かります。こういったものが、民間のファウンデーション、NPOを通じて公開可能となっております。
ちなみに石川県の自治体でも、ぜひ自分たちの勤めている地域がどうなのかを見ていただき、政策などに活用できると面白いのかもしれません。

データ活用に関する政府の取り組み

ここからは少し政府の取り組みをご紹介させていただきたいと思っております。
こちらは昨年の12月7日に法案が成立いたしました「官民データ活用推進基本法」です。文字が小さくて恐縮ですが、この中で政府としては「データをオープンにしていきましょう、官民のデータを構築しましょう」とうたっております。特にこの3条8項ですね、初めて「AI、IoT、クラウド」という言葉が盛り込まれました。
これまではどうしても、マイナンバー法であったり、改正個人情報保護法、あるいはサイバーセキュリティ基本法などもありまして、データを保護する方に動いていました。自治体が作られたデータなどは、特定の目的のため作ったものもあり、それを他に使っていいのか悪いのか判断に迷います。法的にNGなのか、そもそも法がないのか、あるいは法を改正できればオープンにできるのか。こういったところをずっと議論してまいりました。次にそういった流れについて述べます。

2012年、まず「電子行政オープンデータ戦略」が策定されました。それまではデータを保護する方向にいってたんですが、2011年に東日本大震災が起こりまして、その際非常にデータが使いにくかった、あるいはデータが流通できなかったため復興・復旧が進まなかったという反省があり、このような動きが始まりました。
二次利用の問題もありましたがクリアし、そこから年々このように順次展開していきました。昨年では「オープンデータ2.0」ということで官民一体となったデータ流通の促進を図ろうという方針が出されました。このころからようやく政府も本気度が増し、国民に対するコンセンサスがとれてきたと思います。
実はデータ流通の過去を振り返りますと、同じような動きがございました。それは1995年の阪神淡路大震災の後です。その時に地理情報システム、いわゆるGISを活用していかなきゃだめだという動きが出て、国産のGISを含め、盛り上がりました。当時はそもそもまだ携帯電話を持ってる人もいなかったんですが、自治体のデータをかき集めて、アナログデータをスキャンして、場合によってはCADで全部書き起こして復旧に役立てました。当時私も神戸にも入り、一生懸命データを入れました。それ以降は自治体も共通してGIS使っていきましょうという動きが発生しました。IoTにとってもGISは非常に大事だと思っております。

実はIoTには3種類の研究の先生方がいらっしゃることをご紹介させてください。
ひとつは東大の坂村健先生が中心となり、センサーノード、どこからでもデータを取れますよというユビキタスをすすめていらっしゃいます。
それから旧M2Mを進めている、あるいは情報処理で、次世代のコンソーシアムということで申し上げますと、東大の森川博之先生が中心になって進めており、データさえ来ればいろいろと分析しますとおっしゃってます。
それから鹿田先生や徳永先生のようなGISの先生方です。最後は可視化が大事なのでGISからアプローチしていきます、と。
こういった先生方、研究されている方々が一体となって、IoTを引っ張っていると思います。
政府の予算も、昔はGISをつくったことで予算がつきましたが、ついこの間はICT、さらにM2Mということでも予算がつきました。最近は各省庁が農業×IoT、防災×IoT、コンクリート×IoTということで予算をつけておりますが、来年あたりからはAIの比重が重くなり、そちらに予算がついていくと聞いております。

データ流通の現状

今のIoT、データ流通の現状でございます。著作権法から知的財産法、パブリシティ権などの問題があります。今一生懸命経産省がデータ流通をやっておりますが、そもそもなぜ敵に塩を送るような真似をしなければならないのか。生産管理システムのデータをなぜ出さなくてはならないのか。あるいはAというコンビニのデータを、なぜBに使わなければならないのか、こういった声が上がっております。
ただ最近、工業系ですとファナックさんがオープン化に取り組み始めたということもありますので、やはり外圧というか、その波には逆らえないんじゃないかと。逆にオープンにすることによって、相手からもオープンにしてもらって、それをいかに早くどう活かせるかを追求する時代になってきていると思います。

これが2016年までの流れです。そして2017年になって準備しているのがこちらです。
これは総務省と経産省が中心となって進めておりますIoT推進コンソーシアムです。この下に「データ流通推進ワーキンググループ」というのがございまして、さらにその下に「データ連携サブワーキンググループ」というのを立ち上げます。
これについては先ほど申しあげた東大の柴崎先生が座長、オブザーバーに内閣官房、あるいは総務省の情報通信国際戦略局が名を連ねます。情報通信交際戦略局はICTに関するほとんどのことを取りまとめております。例えば以前に出た「ICTまちづくり」もすべてここが主管しております。
さらに国交省の国土政策局ですね、ここは以前からGISの5か年計画というのをずっと策定していた部署でございます。それとJIPDEC、これは一般社団の日本情報経済社会推進協会というところでして、昔は経産省の外郭団体でしたが今は一般社団になりましたので、総務省と書いてありますけども経産省色が強いところです。IoT推進コンソーシアムの事務局も兼任しています。事務局は経産省の商務情報政策局になっていますが、こことJIPDECが連携し、三菱総研ともタッグを組んで進めているところでございます。これが間もなく開始される状況にあります。
その会の発足時に出された資料から抜粋してまいりました。
先ほどは、データは営業面で秘密があるのでなかなか出しにくいと話ましたが、このような形でモバイル空間データ、この所有データを外部に連携して新しい価値を生んでいきましょうという取組です。
最近は外国の方のデータもご提供できるようになりました。ただし外国からのデータはスマートフォンに入っているSIMで判断しますので、例えばマレーシアの方が香港で回線を買って入ってくると、それはもう香港の人と判断してしまっているところもございます。そのため、さまざまなドコモのAI技術を使い、なるべく精度を上げるように努力しております。
それから「G空間情報センター」。こちらは、先ほどの柴崎先生が中心になって展開されています。さまざまなデータを集める、やや第3セクターのような形です。
それと「さくらインターネット」や「RESAS」。これも経産省が中心でやっており、IoTプラットホームのデータを他サービスに連携したり、産業構造や人の流れなどの官民ビッグデータを集約、可視化しております。

その一方で民間事業者がデータ流通のプラットフォームを構築する動きも出てきています。
その代表的なものがエブリセンスジャパン株式会社、オムロン株式会社、データエクスチェンジコンソーシアム、日本データ取引所の4社です。
データ流通業者にとって大事なのは、しっかりとどういったデータを持っているのかをカタログ化しましょうと。各データ流通する、あるいはデータのホルダーの人たちが、こういったデータがありますよと、これをカタログとして提示してくださいとか。それに向けての何か指針を出していかなければいけませんよという動きです。

もう一方で、データが入ってくるんですけども、APIですね、APIの方も整備しなきゃいけない。ただひとつのAPIで固めてしまいますと、柔軟性に欠けますので、このあたりはさまざまなAPIを用意していかなくてはなりません。IoTのプラットフォーム事業者にヒアリングし、なるべくデータ流通がスムーズにいくように検討していこうとしております。
このデータ流通のハブ、あるいはデータ・レイクと言いますが、私の見立てとしては、多分このデータ・レイクを握るところが覇権を握るんじゃないかと考えております。先ほどのGooglやNetatmoも狙っていると考えております。

具体的な動きとして、こちらはSIPですね。SIPと異分野融合分野の農業分野で先行しております名古屋大学、中部大学、東大、三重大学が中心となりSIPで農業分野を進めております。総務省でガイドラインとして取りまとめたものになります。
この中でまずデータ項目を整理しましょう。水位なのか水の高さなのか、ウォーターレベルだとか、レベルオブウォーターだとかバラバラです。メタデータも各センサーメーカーがバラバラにつくってくるため統一されていません。そのため量産効果が働かず、何かガイドラインを示してほしいということで整理しています。
その中では温度とか風、日射時間、湿度など、ほかでも兼用できるような項目が入っており、こういったものが参照モデルとなって他の分野でも使っていけるんではないかと思っております。

次はAPIをご紹介します。APIに関しましては、GISでよく関わられるOGC標準(Open Geospatial Consortium)を立ち上げておりますOGS標準のなかに、SOS、Sensor Observation Serviceがあり、それを総務省の農業組合で実証しました。
それにより筑波にある国立研究開発法人の防災科学技術研究所がeコミマップや官民協働危機管理クラウドなどでもOGC標準をつくることをしています。

「超スマート社会」に向けて

さあ、これまでIoTそれからAIについていろいろお話させていただきました。こういったものが相まって、最終的に目指しているのが「CPSによる社会」と言われております。
このCPSの定義は、最終的にサイバーとフィジカルの空間がデータをもってつながり、機会と人が共存する社会ということです。よくご覧になるかと思うんですけど、私なりにもう少し整理してみたのが次のページです。

フィジカルな世界には、人・モノ・コト・事象がございます。こういったものを、さまざまなセンサーやスマートフォン、あるいは映像等でビッグデータとして取り込みます。それでサイバー空間で収集整理し、AIの技術を使ってモデル化する。それをまたフィジカルの世界に戻してやる。その際に自動化したり、さらにリコメンドすることで効率化、あるいは行動変容を起こす。この行動変容を起こしたり自動化することによって、産業競争力の強化、さらにQOL(Quality of life)の向上を図っていく。

ある経産省のヘルスケアのメンバーとも話した際に、ヘルスケアのデータを10万人集めても意味はありませんと聞きました。今まではそこまででした。
それはどういうことかと言えば、たとえば私は少し血圧が高く、金沢のホテルで計ってみました。そうすると私のスマートフォンに「伊勢田さん、血圧が高いから金沢駅の周辺の居酒屋でしたら、ここでこういう物を食べられますよ」というメッセージが出ます。そして、「それならここの居酒屋へ行こう」という行動変容にまでつなげなくてはいけない。
これは私の例ですが、たとえば介護保険の保険料が上がっているので、どちらかというと未病につなげてほしい。それとなるべく外に出てほしい。健康で長寿でいてほしい。そういう時代を迎えるのであれば、「おじいちゃん、おばあちゃん大変だよね。倒れたんだったら誰か見に行こうか」というより、朝バイタルデータを取る、あるいは朝起きて「元気だよ」と押すだけでもいい。「今日は公民館で落語があるから来ませんか?」というメッセージを受け「じゃあ仕方ない、行ってみようか」というように行動変容を起こすようにしてくださいと。そのことによってQOLが上がってくるでしょう、というわけです。

それから産業競争力の強化では、たとえばタクシー業界は人手不足ですから、その分野にAIの技術を使って効率的にやっていきましょう、というのもあります。先日キャノンの工場がうかがいましたが、自動化でほとんど人がいない。それなら逆に中国から日本に帰ってきても競争力つきますよというような動きになるかと思います。

狩猟社会から農耕社会、工業社会、情報社会、その次がこの超スマート社会と言われております。超スマート社会の定義はこちらです。まず「個別の高度化」、これが分野と地域を超えた動きになってきます。その次に各種データの収集分析、これも横断的に利活用していきます。さらに、必要なもの・サービスを必要な人に、必要な時に、必要な量届けましょうと。それでQOLがあると。
それらが実現するのが「超スマート社会」だと言っております。この地域で白山キャンパスを作られると聞いておりますので、白山の地で超スマートな里山モデルができると、考えられております。

地域の社会的課題にはニーズがございます。それから、地域の産官、金融機関を含め、産官金公民はシーズを持っています。このマッチングをどこでやるのか、といったときに、地域の知識の拠点であるこういった大学の方々に期待したいと思っています。

地域の拠点に求められる人材なんですが、まずIoTの技術者が圧倒的に足りません。ITとあとは機械工業系では意外とOTレベルが不足しています。オペレーション・テクノロジーも必要ですし、ソフトとハード、通信、この人材が足りませんし、当然最近のブーム、データサイエンティストも足りません。
それからここも肝心なところ、ぜひ教育として入れていただきたいと思います。コーディネート。共創を演出できる、創出、調整、最適化できるような人材をぜひ育てていただきたいなと思っております。

これば有名なアメリカの鉄鋼王カーネギーの墓碑に刻まれた言葉です。「自分より賢き者を近づける術を知りたる者、ここに眠る」とあります。カーネギーは人使いが上手だったと聞いております。
AIの技術者、それからIoTの技術者、さまざまな分野の技術者が交流の場が必要です。あとはコーディネーターも育成いただければありがたいなと思っております。

今後は協調領域に、まずは囲い込み、共創ができたら、今度は競争領域にある魅力あるビジネスの創出や活性化につながるという。 2020年には政府もかなりのお金をつぎ込んでいるはずです。そこから先は、死の谷を越えたらダーウィンの海が待っている、と言われていますので共創力でいろんな地元のベンチャーさん含めて、企業が活躍していただくことによって地方創成・一億総活躍社会が築けると思っております。
この地方創生・一億総活躍社会って分かりにくい面もあるんですが、自民党本部でもやりましたし、地方創生の石破さんなんかもしてるんですけども、このマトリクスの中でですね、地方創生、地域の仕事をつくると。で、一億総活躍、先ほど65歳、まだまだいけると働くことによって、ローカル・アベノミクスを築ける、していくとGDP600兆円を実現するというふうになっています。
政策なんですけども、これは今年の秋に通る法案として「地域未来投資促進法案」というのがございます。ものづくり、農林水産、観光、スポーツ、第4次産業というのがありまして、約1000億円の予算を措置する予定でございますので、こういったところもご一緒にやれるといいかなと思っております。

最後になりますが、私はドコモから来ておりますので、簡単にドコモのご紹介をさせていただきます。ドコモは2015年の長期計画で「IoT」「社会的課題解決」「地方創生」「2020」とうたっております。IoTを使って社会的課題を解決し、地方創生につながるように行動しておりますので、スマートフォンだけではなく、ぜひ、この地域、仲間に入れていただければと思っております。こちらがドコモのプラットフォームになります。以上、駆け足でございましたけどご説明させていただきました。
ご清聴ありがとうございました。

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