平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

地(知)の拠点

ホーム > 活動報告 > 地域志向教育研究プロジェクト(平成27年度) > 北陸スマートアグリプロジェクト

KITトピックス/活動報告(平成27年度)

北陸スマートアグリプロジェクト バイオ・科学部 応用科学科 教授 土佐 光司
農業にイノベーションを起こしたい

本日はよろしくお願いします。プロジェクトの背景には、昨今マスコミを賑わせているTTP問題も含め、さまざまな問題が山積みだという日本の農業を取り巻く状況がございます。
たとえば、北陸では65歳以上の農業従者の割合が全国平均を上回り、高齢化が進んでいるなど、生産性の向上が課題となっております。
しかし、その一方で農業法人は増加傾向にあります。農業法人は、若い人を社員として雇用し、事業を展開しています。私たちのプロジェクトではまず、農業法人が抱える課題の把握から始めました。

平成26年の教育研究交流会「農業イノベーション」を皮切りに、同年第2回アイディアソン、27年には地元農業法人との打合せ、現場見学などを実施しました。その結果、「生産管理」に関して、農業従事者が経験に基づいて人手により行っていること、その手間を削減し、管理コストを削減すること、経験すなわち管理のノウハウを数値で蓄積することに対する要望が高いことがわかり、それをプロジェクトの目標としました。
こちらが本プロジェクトの目的と活動のアウトルックです。



リモートセンシング技術の適用、化学分析、情報システムの構築の3つの分野に分け、最終的にそれを統合することで、効率化に課題解決に寄与したいと考えて活動を開始しました。
それぞれに初年度がデータ収集およびプロトタイプ、今年度が分析・統合化、次年度以降にシステム化というスケジュールで進めました。今年度の活動として行った課題解決のための分析・統合化について、それぞれの分野ごとに紹介させていただきます。

ドローンによるリモートセンシング

低高度リモートセンシング技術の適用からお話します。これは、最近話題のドローン(UAV)を使って、農地の状況を把握しようという試みです。人工衛星もしくは航空機からの撮影では、雲があると観測ができない欠点がありますが、ドローンは雲の下を飛行するため雲による障害はありません。


比較的高高度からドローンで撮影した画像

プロジェクトでは、ドローンを活用することで、稲の成長をモニタリングする手法を開発しました。稲高の管理は成長を把握する上で重要な情報であり、稲高によって、追肥、水管理など対策を取らなければいけません。 
従来はあぜ道脇の特定の稲をものさしで計測していましたが、一部の稲のみの計測のため、全体の稲高は把握できない状況でした。
そこで、ドローンで圃場を撮影し、写真測量で画像から稲の3次元モデルを作成することで、圃場全体の成長を把握できるようになります。



ほかにも、近赤外線改良カメラを使い、葉色、植生指標(NDVI)を科学的に分析しました。稲は刈り取る時期近づくと、植生指標が低下します。それにより最適な刈り取り時期を知ることができます。
ドローンの注目度が高いこともあり、リモートセンシングの取組みは新聞・雑誌に度々掲載されました。


化学分析による検証作業

次は分析の結果が合っているのかどうかを検証する「化学分析」の分野です。水田4枚について、肥料成分を測定したのち、採取した米について化学分析を行いました。
測定したのは①水田用水の肥料成分濃度 ②水田土壌の肥料成分濃度 ③米の食味関連成分についてです。
食味関連については、水分、たんぱく質、アミロースともに多少のばらつきはあったものの4枚の水田ともにほぼ同じ数値でした。
すべての水田でおいしいお米が収穫されていることがわかりましたが、実験的にはバラつきがあったほうがよかったというのが正直な感想です。


試料採取の様子

工夫を重ね情報システムを構築

最後が「情報システムの構築」についてです。この分野では、野菜の栽培を前提で考えました。こちらがシステムの概要になります。


モニタリングテストは2度行いました。やってみてわかったことなのですが、親機と子機の通信可能距離が当初予想していた100mよりも短く、25m程度でした。そこで知恵を絞り、アンテナの種類、設置位置の見直しを行い、再度現地テストを行いました。


センサの設定作業

その結果、少々不安定でしたが子機から継続的にデータを受信できました。最初のテストでセンサの問題が発生したため、親機拡張基盤とプログラムを開発し、子機においてもバッテリーを改良。従来より小型、低消費電力を実現しました。
一連の取り組みにより、圃場へ直接行かずとも温湿度の変動を視覚的に確認できるようになり、圃場内の管理がより容易となります。今後の課題としては、スプリンクラー、ハウスの温度調整などのリモート制御の実装といった、圃場作業の自動化への発展が挙げられます。
以上で北陸スマートアグリの発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

ページトップへ

金沢工業大学 産学連携局 連携推進部 連携推進課

〒921-8501 石川県野々市市扇が丘7-1 TEL 076-294-6740 FAX 076-294-6706