平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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KITトピックス/活動報告(平成25年度)

プロジェクトリーダーが語る
医工連携プロジェクト

医と工の融合により多くの人に笑顔を届けたい - 工学部 機械工学科 教授・工学博士 新谷 一博

連携から融合へ、感動を共有するスタイルを確立

―プロジェクト発足の経緯は?

 近年、「ものづくり大国・日本」は、その地位を人件費が安いアジアの国々に奪われつつあります。日本のものづくりが生き残っていくためには、これまでの利益最優先型の産業構造から、この国にしかできない「生活優先型産業構造」への変革が必要です。

 さらに、生活優先型のものづくりにおけるテーマとして、「人にやさしい」というキーワードがあります。少子高齢化にともない、医療の重要性は増す一方ですが、医療の現場で使われている機器は、人にやさしいとは限りません。しかも高額のものが多く、医療機関が導入を躊躇してしまうケースもあります。

 では、なぜそんな問題が起きているのでしょうか。その要因のひとつに、現在使われている機器が、医療従事者の視点だけでつくられているという事実があります。そこで、医療機器開発の領域に、我々工学の専門家の技術を融合させ、「人にやさしい」医療機器を提供しようという目的のもと、プロジェクトが生まれました。近年は、内視鏡を用いた手術の増加にともない、小さくて性能がよい医療機器が求められる傾向があります。精密なものづくりは、われわれ工学屋の専売特許みたいなものですから(笑)、この分野では特に貢献が期待されています。


医療従事者とのディスカッション風景

―医工連携の現状について教えてください。

 全国各地で「医」と「工」の連携が進められていますが、必ずしも両者がかみあっていないように見受けられます。その背景には、技術者は医療の知識がないため何をしたらいいのか見当がつかず、医療従事者も同様に私たちに何ができるのかを知らないため要望を伝えにくい…そういった理由があります。

 そこで、私たちは連携よりさらに一歩踏み込んだ「融合」という形で医療機器開発を進める方針を立てました。医学・工学の専門家が、「人にやさしく安全な医療機器を提供し、笑顔を届けたい」という目標を共有し、同じゴールを目指しています。

最終的には、オンリーワンの工大ブランドを創りたい。そんな夢を描いています

根底にあるのは思いやりの気持ち

―プロジェクトを通じて学生はどのようなことを学びますか。


医工連携フォーラムへの参加風景

 本学には「KITオナーズプログラム」という制度があります。これは、「自ら考え行動する技術者」を目指し、参加する学生自らが目標を設定し、それを達成するために活動する自己目標達成プログラムです。50を超えるプログラムが設定されており、そのひとつが「医工連携に基づいた人間にやさしい医療器械の創製」です。

 現在学部1年生から3年生にかけて約20名の学生が参加し、医療業界から提供されたニーズに応える形で課題に取り組んでいます。プログラムへの参加を呼びかける際には、「医学の知識をもった技術者を目指そう」ではなく、「病気で苦しんでいる人を助けませんか」と声をかけます。「好きこそものの上手なれ」というように、興味を抱いたことに関して学生は熱心に学びます。我々はつい固定概念にとらわれがちですが、学生からフレッシュなアイデアが飛び出すことが多く、刺激を受けます。


医療従事者とのディスカッションも
定期的に行われる

 また、医療機器開発の現場を肌で知る機会として、製造メーカーに見学に行くこともあります。医療機器をつくるときの注意点や苦労話など、開発者の生の声を聞くことで、学生たちも気持ちが新たになるようです。

 プログラムの成果は、年に数回、行政や企業を招いて開催する研究会や医学部へ出向いて行う発表会、報告会等で発表しています。

 医工連携がスタートした当初は、医科大と本学は単独で共同研究を進めていましたが、平成20年に大学間で協定が締結。さらに、医工融合の研究拠点として、平成24年3月に本学内に「医工融合技術研究所」を設立するなど、よりスムーズな医工融合への仕組みを着々と整えてきました。

―プロジェクトと地域社会との関係についてお聞かせください。


次世代の工学技術者を育てる基礎知識講義

 先ほども申しましたように、医工連携の取組みを発表会等で積極的に発信してきた結果、医学界から「こんなものがつくれないか」という依頼も増えてきました。

 高いものづくり技術を持つ地元企業とわれわれが手を取り合い、オンリーワンの技術を手に入れることができれば、大きなビジネスチャンスが生まれる可能性もあります。

 実際に、行政の補助金事業に採択されたり、試作モデルの量産体制に入ったなど、成果も徐々に表れはじめ、ゆくゆくは、そういった技術を、地域ブランド、工大ブランドとして世界に発信したいと思っています。医工連携において、知識や技術以上に大切なのが「病や疾病で困っている人を助けたい」という思いやりの気持ちだと思います。その気持ちを胸に、これからも人にやさしい医工連携への挑戦は続きます。

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