平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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KITトピックス/活動報告(平成25年度)

プロジェクトリーダーが語る
まちづくり再生プロジェクト

身近な地域を学びのフィールドに、新たな価値を生み出す - 環境・建築学部 建築デザイン学科 准教授・博士(工学) 宮下 智裕

2つのプロジェクトで新たな価値を創造

-プロジェクトの概要について教えてください。

 まちづくり再生プロジェクトは、建築・不動産の現状に着目した「PE2・RDAプロジェクト」とICTを活用して地元の個人商店と地域コミュニティを結ぶ「CirKitプロジェクト」の2つのプロジェクトで構成されています。

 近年、本学のある野々市は、郊外の大型商業施設の進出により、地域の商店街の賑わいやコミュニティが失われつつあります。「CirKitプロジェクト」では地域全体の活性化を目的に、インターネットやスマートフォンなどのICTを活用して、地域の個人商店と地域コミュニティをつなぐ活動を中心に続けています。

 プロジェクトメンバーは、マーケティングを行い、地域住民や個人商店のニーズや課題を把握。そして、ソーシャルメディアやデジタルサイネージなど、自分たちが持つ技術で情報発信のサポートを行っています。


「株式会社CirKit」設立記念式典

 プロジェクトを通じて、地域の方々とディスカッションを行う機会もあり、互いに信頼関係を深めているようですし、運営するホームページは地元ならではの情報が多く、好評です。

 なお、平成25年の4月には教育研究プロジェクトをさらに発展させ、本学では初めてのベンチャー「株式会社CirKit」を設立し、メンバーが株式会社のインターン生として会社経営と実務を体験しています。今後は企業として、「ポータルサイト・SNSサイトの運用」を軸に、「店舗集客事業」「パソコン家庭教師事業」「デジタル広告事業」の3本の事業で野々市市の地域活性化を目指していきます。

-もうひとつのプロジェクトについてお聞かせください。

 私がリーダーとして取り組んでいるのが「RE2・RDAプロジェクト」です。まず、プロジェクト独自のリノベーションについて説明する必要があります。対象物件が建てられたおよそ20年前と現在とでは学生のライフスタイルも様変わりし、「個」が重視されるようになりました。

 壁紙を張り替えたり、トイレを改修すれば、その直後は入居者を確保できるかもしれません。しかし、建物としての価値は年々償却されていき、再び改修が必要になる、といったサイクルが繰り返されます。また、当時の学生アパートは画一的な造りが主流で、「個」を重視する借り手にとって住み心地がよいとは言えません。建築を学んでいる者としては、こんな課題を前にして指をくわえて見ているのはもったいない(笑)。

 そこで、平成21年から始めたのが、学生が住空間に新たな価値を創造する「RDA(Re-Design Apartment)」の取組みです。その最大の特徴は、ハードだけでなく、「誰が」「どんな風に」という「暮らし方」までをリノベーションすること。たとえば、植物が好きな学生が集まったアパートなら建物全体を緑で彩るとか、イベント好きが集まれば広場的なスペースをつくる、など。

 学生向けの物件には小さな浴室がついているものが多いんですが、リサーチしてみると、年に数回しか浴室を利用しないという回答が約7割を占めました。そうなると、「浴室は本当に必要か。シャワーだけで十分では。そのスペースを他のものにできないか」ということから考え直す必要がでてくる。逆に入浴好きの学生が集まるなら、浴室スペースを広くとることで部屋が狭くなっても満足度は高まる。このように、「モノ」ではなく、「コト」を中心に住環境を考えるという点が、特徴だと思います。

ほぼ満室という成果を手に入れた

-RDAにおいて学生が果たす役割と成果について教えていただけますか。

 RDAでは、4年間で100近い部屋を学生自身がリノベーションしてきました。さらに、自分たちが手がけた建物の価値を伝えるため、在校生に向けてプレゼンテーションを行う機会を設けており、毎回多くの学生が会場を訪れます。同時に、本学のウェブサイトにRDAを行った物件を紹介するページを作成し、情報発信も図っています。これらの活動の結果、手がけた物件はほぼ満室状態で稼働しており、借り手の満足だけでなく、地元の不動産業者、オーナーからの信頼を得ることにもつながりました。

 RDAにおいて改修資金を出すのはオーナーです。出資にはオーナーを納得させるだけのビジョンが必要ですから、学生たちは自分が描いたデザインが建物にどのような付加価値をもたらすかということを伝える術を、対オーナーのプレゼンテーションで学びます。


実際にウェブサイト内に掲載されている
RDA物件の紹介ページ

 全般的に賃貸物件の家賃は値下がり傾向にありますが、RDA対象物件は、「固有の付加価値」によって改装前より上がることが多く、「賃料が高くても志向にマッチしていれば選ばれる」という学生ニーズを証明する結果となりました。

 改修にあたっては、見積りの作成からオーナーや工務店に対する交渉まで、すべて学生が行っています。完成までのプロセスを通じて、折衝能力からスケジュール管理、プレゼンテーションのスキル、コストに対する感覚までを養うことができ、その体験は社会人になってからの大きな武器となります。

異なる2つのプロジェクトの相乗効果により新しい価値を創造し、地域全体を活性化する

地域リノベーションのプラットホームを創る

-地域リノベーションのもうひとつの取組みである「RE2」とは?


RE2フォーラムの様子

 RE2(Renovation Relationship)は、アパートに特化したRDAを拡大し、地元工務店や不動産会社等とともに地域のリノベーション産業の活性化を目指すプロジェクトです。

 RDAで得られた成果をベースに、国内の有識者を講師に招き、地元企業や学生が交流するフォーラムの開催や、設計事務所・工務店・不動産会社・アパートのオーナーらから成るチームで課題やニーズを検討し、実践につなげていく「リノベーションケーススタディー」を開催し、新たなビジネスチャンスを見いだします。

 現在は、野々市市に残る、隣近所のつきあいが密なコミュニティを、世代を超えたコミュニケーションスペースとして活用できないかと模索中です。我々が中心となって、住民、学生、そして新たに野々市市に居を構えた若い世代が一堂に集える場所をまち中にリノベーションすることで、高齢化が進む地域の活性化を期待しています。

 もうひとつのプロジェクト「CirKit」もそうですが、大学と地域がこれだけ密な連携をとりながら進めている事例は稀ですし、その信頼関係にこそ、このプロジェクトの意義があると思います。

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金沢工業大学 産学連携局 連携推進部 連携推進課

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