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KITとニューヨーク大が共同で脳磁研究所開設

金沢工業大学発の超伝導技術がニューヨークで結実
開所式:2009年1月23日17時(ニューヨーク大学にて)


金沢工業大学と米国・ニューヨーク大学は、このたび共同脳磁研究所(KIT/NYU共同脳磁研究所/所長:アレック・マランツ ニューヨーク大学教授)を設立しました。つきましては当共同研究所の開所式を現地日時1月23日(金)17時に、ニューヨーク大学ワシントンスクエアキャンパスにて開催いたします。


金沢工業大学先端電子技術応用研究所(所長:賀戸久教授)が開発した全頭型脳磁計が、昨年7月にニューヨーク大学の心理学部に設置されました。この脳磁計は、同大学のアレック・マランツ教授の研究グループにより、脳による言葉の認識や、文章理解などの謎を探求する神経言語学(neurolinguistics)の研究に利用されています。今回の共同研究所設立により、脳機能研究からのフィードバックを脳磁計開発研究へ生かし、より高性能の脳磁計システムの開発が可能になると期待されます。


KIT/NYU共同脳磁研究所ホームページのURL
http://www.psych.nyu.edu/meglab/

 



< 用語解説 >
金沢工業大学 先端電子技術応用研究所
 金沢工業大学の附置研究所の一つ。脳磁計をはじめとするSQUIDを用いた超微小磁場計測装置に関する技術開発を基幹とした研究所で、1998年の設立以来、これまで横河電機や米国・マサチューセッツ工科大学等に技術供与してきました。2003年には横河電機が同研究所の技術を受けて、世界最高の440チャンネルの脳磁計システムを開発しました。SQUID磁場計測装置は、薄膜製造技術、低温技術、磁場遮蔽、信号処理技術などさまざまな技術の複合体で、すべての技術を備えた研究機関は国内ではほかに例を見ません。
 同研究所で開発された脳磁計は、これまでに米国・マサチューセッツ工科大学、メリーランド大学、ドイツ連邦物理工学研究所(PTB)や豪州・マコーリー大学などにも設置された経緯があります。


脳磁計
 脳神経の活動に伴って発生する微小な磁場を磁気センサで検出し、脳活動を観察する装置です。脳の磁場は地磁気の10億分の1程度の強度しかないため、検出にはSQUIDと呼ばれる超高感度磁気センサを使用します。全頭型脳磁計はヘルメット構造を持つ液体ヘリウム用の極低温容器の内壁に沿って、100~数100箇所に配置されたSQUIDセンサによって脳表面のあらゆるところから誘発する磁場をくまなく検出することができます。
 検出した脳磁場データに、磁場源解析と呼ばれる処理を行い、脳の神経活動を可視化することができます。現在では、脳機能解明の研究に利用されているほか、脳腫瘍手術の術前脳機能マッピングや、てんかんの焦点部位同定など、医療機関でも活躍しています。
 

脳磁計測システム
全頭型脳磁計(横河電機提供)
 

SQUID

SQUID(超伝導量子干渉素子)
 超伝導を応用した微小な磁場を感知することのできる素子。シリコン基板上にニオブ薄膜を形成し、半導体デバイス技術の応用で作成したSQUIDチップにニオブの細線で作成した検出コイルを接続し、磁気センサを構成します。この磁気センサは液体ヘリウムの極低温(−269℃)中で超伝導状態に保たれ、地磁気の100億分の1程度の小さな磁場を検出することができます。


ニューヨーク大学
 1831年に開校した米国ニューヨーク市にある私立大学。自然科学系から人文科学系までの幅広い分野の課程がある総合大学で、学生数は5万人以上。芸術学部は数多くの映画監督や有名俳優を輩出していることで有名。また、これまでに卒業生および教員の中から多くのノーベル賞やピューリッツァー賞受賞者を輩出しています。今回のKIT/NYU共同脳磁計研究所は同大学の心理学部の中に設立されました。同大学は故サミュエル・ウィリアムソン博士がSQUIDによる脳磁場計測を初めて認知科学に応用したいわば脳磁計による脳研究の発祥の地でもあります。

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