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KIT教育改革の核として位置付けた「大学教育再生加速プログラム」

大学教育再生加速プログラムとは

金沢工業大学は、これまで多くのGP事業等の採択を受け、各々の教育課程ならびに課外教育プログラムの充実を図ってきました。
平成26年度に公募された「大学教育再生加速プログラム(AP事業)」は、「アクティブ・ラーニング」「学修成果の可視化」「アクティブ・ラーニングと学修成果の可視化の複合型」「入試改革」「高大接続」の5つのテーマの内から各大学がテーマを選び、具体的な取り組みを提案するもので、全国から250件の申請があり、46件が選定されました。
本学では、これまでのGP事業等で取り組んできた各教育課程等の改善を学部教育全体で推進し最適化を図ることを目的に申請し、「アクティブ・ラーニングと学修成果の可視化の複合型」に選定されました。

一方、今日の大学教育においては、各大学において一貫性をもって策定された3つのポリシー(①卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)、②教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、③入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー))のもと、高等学校段階で培われた「学力の3要素」(1)知識・技能、(2)思考力・判断力・表現力等の能力、(3)主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度 を更に発展・向上させる視点に立ち、社会と連携しながら、教育内容、学習・指導方法、評価方法等の質的転換を図ることが求められます。
このことを踏まえ、平成28年度から大学教育再生加速プログラムはAP「高大接続改革推進事業」として位置付けられました。今後は、全てのテーマの取組において、選定テーマを中核に、入口(入学)から出口(卒業)まで質保証を伴った大学教育を実現するための総合的な取組を一層強力に推進することが期待されています。

アクティブ・ラーニング 問題解決学習、体験学習、反転授業、ディスカッション、グループワーク、教材開発をはじめとした学生の能動的な学修を取り入れた教育手法にとどめず、学生の教え合いの支援、ラーニング・コモンズの整備、チームラーニングの推進にも幅を広げ、学生自身も興味や意欲を持って主体的に学ぶアクティブ・ラーニングを目指します。

学修成果の可視化 学修には、授業中の学習だけでなく金沢工業大学での多彩な学びが含まれます。テストの点数だけではなく、ポートフォリオ等も活用し、他者評価と自己評価を認識することが重要です。
学修プロセスや強み・弱みを学生自身と教職員に対して可視化し、学生の主体的な学修を支援することで、次の学びや行動につなげる仕組みを構築します。

金沢工業大学における課題

主体性(何をやるかが決まっていない状況で、自分で考え行動すること)と明確な目標を持って授業に参加する学生、授業で得た知識を実践する場として課外教育プログラムを有効活用する学生がいます。一方で、課外教育プログラムに参加している学生は実質4割程度であり、中には参加していても正課教育との相乗的な学修に発展していない学生もいます。
本学では、実社会の問題に対して、何が必要とされているのかをチームで考え、創出した解決策を具体化して実験・検証・評価できる「イノベーション力」を持ちあわせた“自ら考え行動する技術者”育成の観点から、体験型の学修を重視しており、特に「正課教育と正課外教育の実質的連動」を図ることを課題と捉えています。

本事業の目的

本事業では、CDIOのフレームワークに照らし合わせ、Conceive(考える)・Design(設計する)の重点を正課(授業)に、Implement(実行する)・Operate(運用する)の重点を正課外(課外教育プログラム)に位置付け、学生の能動的な学修が可能となる環境を整備します。
具体的には、新たに構築するシラバス(e-シラバス)を通して正課と正課外を接続し、それらの活動における学修内容・時間・達成度などをポートフォリオで統合させることで、学修成果の可視化を図ります。これにより、全学的なアクティブ・ラーニングを展開し、正課と正課外の活動を可視化しながら、学生の能動的な学びの場としてのアクティブでオープンなキャンパスを形成します。また、学生個々の達成度に応じた指導やそれに基づく教育改革の推進が期待できるこの取り組みを、本学では教育改革の核として位置付けています。

※本学は、工学教育の改革を進める国際的組織「CDIOイニシアチブ」に加盟しています。CDIOイニシアチブとは、Conceive(考える)、Design(設計する)、Implement(実行する)、Operate(運用する)の4つのキーワードで代表される事項全体を技術者教育の対象と捉え、「工学の基盤知識となるサイエンス」と「実践・スキル」のバランスを重視し、前者を保持しつつ後者の強化を図るという、質の高い工学教育の実現を目指す工学教育改革のための仕組みです。

取組内容


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「e-シラバス」と「ポートフォリオ」を連動させた「統合型アクティブ・ラーニング・システム」を構築し、教育内容・教育方法の具体的な改善を図ります。

Ⅰ. チーム・ラーニングの促進

①学生が「高い学修意欲」「具体的な目標」を持つきっかけとなる
②学生の潜在能力を引き出し、向上への気づきを促す
③「学力×人間力=総合力」の考えのもと、学生の能力を最大限に成長させ、個性を輝かせる

チームによる問題発見・問題解決型学修の一層の充実を図るため、問題発見や問題解決の各々のフェーズでの教育力の向上、手法の修得、他の科目や課外教育プログラムとの関連付け、評価法の充実、学生チーム内での学び合い等に取り組みます。

教え合いの環境づくり
予習復習を促す

Ⅱ. 教育支援機構による学修支援

教育課程と教育支援機構の各センターが連動して、正課教育と正課外教育の両面から、学生に充実した学修機会を提供する環境を整備しています。同時に、学生の学修状況の情報を各センターでの組織的な教育改善活動へつなげることを可能としています。
教育課程と教育支援機構を楔形に組織することで、各センターに所属する教職員は、それぞれのセンターの特色を活かし、独自の意思決定により、学生に対して様々な学修機会を提供します。教育支援機構では、多様な価値観を有する学生に対して、教職員が緊密な連携を図り、迅速かつ的確に学修機会を提供します。

学修機会の創出・支援
学修機会を提供

Ⅲ. 学修を繋ぐe-シラバスの導入

今まで取り組んできたアクティブ・ラーニングを更に充実・加速させるため、正課と正課外を密接に連動させる新たなシラバスとして、Web上で展開する「e-シラバス」を導入します。

e-シラバスには、授業の各コマで参考となる「e-ラーニング教材」、「教員が作成する配布資料」、「参考ビデオ」、「授業の録画データ」、「各教育センターが行う講習会や勉強会」などの教育情報やその授業科目に関連する正課外教育プログラムの具体的な内容、また、そこに参加する学生の成長や達成度を示す学生の紹介(テレビ番組:「物語の始まりへ」等)の掲載を可能とします。

単なる事業計画だけを示すものではなく、その科目の主教材となりえる「e-シラバス」を通して、正課教育と正課外教育を連動させ、学生自身が大学で何を学びたいか、そのために何をすべきかを常に考え、具体的な活動(学修)に落とし込めるシステムを整備します。

学びの紐づけ・全体最適
意欲を促す

Ⅳ. 学生との対話を促す教育システム

“学生の成長を学生自身や教職員が認識すること”に焦点を当て、学生が目標と現状の差を定期的に認識し、今後の学修計画や行動に移せるための新たなポートフォリオへ進化させます。教職員は学生の主体性を意識した指導を行い、学生が自身の学修状況をリアルタイムで把握し「振り返り→気づき→行動」のサイクルを廻すことを目指します。

学修成果・成長の可視化
対話を促す

Ⅴ. 成長を多面的に分析し、学生の成長IR情報として活用

このシステムにより、学生一人ひとりの学修成果をリアルタイムで確認し、この情報を元に、入学前の学修歴から卒業後の進路状況までの成長記録を多面的に分析します。またそれらを学生の成長IR情報として活用し、有効なアクティブ・ラーニングに向けた指導やアドバイス、充実した修学指導、教育内容と教育方法の改善などの全学的な教学マネジメントの充実に役立てます。

Ⅵ. 教育改革による教学マネジメントの良質化

アクティブ・ラーニングは、学生の意欲向上に加えて、教員の教育力やファシリテーション力、また職員の教育改革の推進に対する意識が大きく問われるため、学生の学修成果を評価指標としたFD・SDを行い、継続的な外部評価を積極的に活用します。これにより、教学運営の正のスパイラルを発生させ、教学マネジメントの良質化につなげます。

推進事例

教え合いやチームラーニングを牽引する学生を育成するために
「学生自身ができること」「学生だからこそできること」に対する挑戦を支援します

アクティブ・ラーニング ~教え合い~

学生自身が基点となり相互に教え合うグループ活動を取り入れることで、学生の主体的な学修を促し、リーダーとしての成長や理解と能力の統合化を図る試みを開始しました。

学生への期待
 ●学生自身が主体性を持って学ぶ
 ●学生同士で共に学ぶ仲間をつくる
 ●他の学生をまきこみ、教え合える場をつくる・つなげる・動かす
 ⇒ 学び合いの輪を広げる

学修の実践 ~考えて行動する~

正課教育における演習や実験だけではなく、多彩な課外教育プログラムにても、学生が学修を実践する機会と場を与え、学びを有効活用できる環境構築を図っています。学びを具体化することで、学修効果の質を高め、学修意欲向上へつなげる事ができます。自ら行動し、実際に手を動かして成功や失敗を体験することも大切な経験と考えます。

教職員が一丸となって学生の学修を支援することで、
能動的に学ぶ学生を増やします

アクティブ・ラーニング ~反転授業~

反転授業や授業内におけるチームラーニングを座学とのバランスに考慮しつつ取り入れたところ、前年度に比べ、好成績をおさめる学生割合が30%以上増加し、単位修得率が10%以上増加した科目があります。

反転授業:授業と課題の役割を反転させる授業形態であり、科目の特性に合わせて授業に取り入れることで、学修意欲の向上や知識の定着を促します。学生は事前課題やe-learning教材を使い知識の習得を目指した予習を行い、授業では予習を前提としたディスカッションや問題解決学習など、知識を使うことで学ぶ授業形態です。

e-シラバスの活用 ~予習復習~

授業計画を示すだけではなく、学生の学びや金沢工業大学の多彩な学修を具体的な学びの実践へ紐づけることを目指したe-シラバスシステムを構築します。授業明細に教材・レポート・ポートフォリオ等を組込む機能の追加など、各教員の教育方法に合わせた活用範囲の拡大を可能とします。

⇒正課教育と予習・復習をはじめとした正課外教育の両方を意識した学修を促す

修学履歴やポートフォリオの活用 ~学生との対話~

成績評価と学生の自己成長を記録したポートフォリオをもとに、学生自身が、他者評価と自己評価を踏まえて目標や将来像に沿った歩みができているかを確認します。学生と教職員との「対話」を促すことで、より具体的な修学指導や進路指導への活用を目指します。各科目で身につけた能力や今後の学修についても話し合い、学生が常に各自の目標に対する現在の学修を意識できるシステムを構築します。

⇒学生の成長に焦点を当て、学生自身も自らの成長や学びを確認し、「振り返り→気づき→行動」のサイクルを廻すために活用する