材料系教育プログラムは、技術者として修得すべき能力を三つに分類し、それぞれの能力に対して学習・教育目標を設定している。
第一のグループ『技術者基礎能力』は、技術者として社会に貢献すると共に、次世代の新しい科学や技術の発展と伝承を担うことができる技術者に共通な資質を育成することを目的としている。
第二のグループ『専門基礎能力』は、材料技術者として活躍するために必要な材料工学分野の専門的な基礎能力、特に、材料工学分野の各種科目を理解しその知識を問題解決に応用する能力、設計解を考え製作可能な設計案に纏め上げる能力を育成すると共に、基本的な加工技術と材料の性質に関する知識を修得することを目的としている。
第三のグループ『統合的応用能力』は、学んできた工学知識の重要性を真に理解し、それらを技術者のツールとして使いこなすために、統合的な応用経験を与えることを目的としている。なお、工学設計Vは単に研究に偏らず設計問題として種々の工学的問題への取り組みをも奨励するもので、新しい材料を創製したり、工業製品を設計したりできる能力を養成する。
T.技術者基礎能力
(A) 自己啓発・自己管理能力:自己の能力を正しく認識し、自己啓発を継続し、自己管理能力を高め、自己実現への努力を続けることができる。
(B) 問題発見・問題解決能力:技術者としての責任感や倫理観、進歩発展に対する意欲などに基づいて社会活動の中で解決すべき工学的諸問題が発見でき、様々な知識を集約しながら、問題を分析し、解決案を導くことができる。
(C) コミュニケーション能力:説得力のある報告書を書く能力とともに、図、表、式、口頭発表、討議等によって他人と効果的な情報交換ができ、さらに日本語や外国語を用いて意見や自分の考えを伝えることができる。
(D) 技術者の倫理的判断能力:国際的な環境の中で働く技術者として、適切な意思決定と行動ができるように幅広い倫理観・国家観・世界観・歴史観を涵養するとともに、科学・技術が社会および自然に及ぼす影響や効果を総合的に洞察すると共に理解でき、社会に対する責任を自覚することができる。
(E) 多様な価値観の理解能力:世界の中における日本の位置と役割について洞察し、人間の本性および人類が持つ多様な価値観に関する理解を深めることができる。
(F) 現象のモデル化と分析能力:数学や物理学、化学を工学のツールとして利用しながら、様々な工学的問題を数学的にモデル化し、工学的現象の本質を理解し、分析し、予測し、最適な解を求めることができる。
(G) コンピュータリテラシー:ワードプロセッサーや表計算ソフトウエアなどのコンピュータ・リテラシー ツールを充分に活用でき、日常の勉学やプロジェクト活動において迅速な問題処理と効果的なコミュニケーションを図ることができる。
U.専門基礎能力
(H) 物理:工学の基礎理論に関連する物理(力学、熱、振動と波動、電気・磁気など)について学習し、それらを材料系の専門分野に応用できる。
(I) 化学:工学の基礎理論に関連する化学(物理化学、有機化学、無機化学)について学習し、それらを材料系の専門分野に応用できる。
(J) 材料科学:材料の構造、特徴、性質がどのような要因に因っているのかを理解し、これらの知識を材料系の専門分野に効果的に応用できる。
V. 統合的応用能力
(K-1)プロセッシング技術:「材料プロセス」、「材料加工学」、「工学専門実験・演習I,II」、などにより、材料のプロセッシング技術について学び、「工学設計III」において新しい機能をもった材料を創製するためのプロセスを設計することができる。
(K-2)高機能発現・創製能力:「高分子機能材料」、「機能性金属材料」、「工学専門実験・演習I」などにより様々な機能性材料についての基礎と応用を学び、「工学設計III」において新しい機能をもった材料や工業製品を創り出すことができる。
(K-3) システム化技術:「構造材料学」、「コアゼミ(複合化材料)」、「工学専門実験・演習II」などでシステム化技術の専門知識を習得し、「工学設計III」において、材料をシステム化・複合化して新素材を創製することができる。
(K-4)材料評価能力:「材料強度学」、「工学専門実験・演習I,II,III」により、材料の構造や性質を評価できる能力を養成し、「工学設計III」において材料や工業製品の性能を評価することができる。
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