火の動力およびこの動力を発生させるのに適した機関についての考察
1824年
ニコラ・レオナール・サディ・カルノ(1796-1832)
 カルノ家は政治的に有名な家系であり、サディの父ラザールはナポレオン治下の有力政治家でありました。サディ・カルノはエコル・ド・ポリテクニク(理工科大学)を1814年に卒業して、技術将校として軍務につきましたが、ナポレオンの没落後、1819年にパリに戻り、そこで研究生活に入りました。
 カルノは蒸気機関の熱効果について研究し、その理論を創り上げた最初の人でした。カルノは熱素 (カロリック) 説によって熱による動力と落下する水による動力とを比較しました。そして、彼は落水による動力が、その落差と水の量に依存しているのと同様に, 熱の動力は、温度差と熱素の量の相違によって生ずると結論したのです。カルノは概念上の理想的熱損失のない熱循環過程、カルノ・サイクルというものを考え、これの思考実験によって、熱と機械的仕事が当量関係にあり、相互に変換し得ることも初めて示唆しました。また、この論究の過程で、熱は常に温度の高い所から低い所へ移動し、その逆は起こり得ないという。現在では熱力学の第2法則と呼ばれる原則の初期のアイデアを述べています。これは後にクラウジウスによって定式化されるのですが、このようにして、彼は物理学の新しい領域、熱力学を創始したのでした。